2018.03.19(月)

農研機構市民講座」を4月14日開催

食と農の科学館でソバの品種育成のお話

従来法から最新の方法まで

  農研機構と上田農機(株)、(株)タイショーは共同で主にキャベツを対象に、畝立てと同時に肥料を畝内の上層と下層の二段に局所施肥できる野菜用高速局所施肥機を開発した。開発機は車速に連動して高速•高精度に肥料を操り出せると同時に、作物の生育に効果的な位置に局所施肥を行うことができる。今後、耐久性など量産化に向けた検討を行い、平成30年度に市販化する予定だ。
  ポイントは傾斜地でも高精度に肥料の操出しができる。台形状の畝を成形し、畝内の上層と下層の二段に局所施肥する。作業速度は1.4m/s(5.0km/h)まで可能で、従来機に比較して約2割の作業能率の向上が期待できる。肥料詰まりセンサーにより肥料の撒き損じを防ぐ。以上の4点が挙げられる。背景と経緯

野菜用高速局所施肥機(条間45cm仕様)
 
<背景と経緯>
  キャベツの生産地で一般的に普及している、接地輪により施肥ロールの回転を制御する畝立て同時局所施肥機は、土壌条件やほ場の傾斜の影響により接地輪の回転にムラが生じて施肥量のバラつきが生じやすく、また、作物の初期生育の確保を目的として畝上面に散布される肥料が風雨により流れてしまう等の問題を抱えていた。
  そこで農研機構では、農業機械等緊急開発事業(緊プロ事業)において、上田農機(株)、(株)タイショーと共同で、傾斜のあるほ場でも車速に連動した精度の高い施肥を行い、キャベツの生育に効果的な局所施肥を畝内二段の位置に行うことで肥料の流出を防ぎ、環境負荷を低減する野菜用の高速局所施肥機を開発した。
<内容>
1 本機は3条用の作業機で、条間45cm仕様と条間60cm仕様がある(写真1、表1)。本機を利用する前にはロータリ耕うんを行う必要がある。
2  GNSSセンサ 1) で車速を取得するとともに、傾斜角度センサでほ場の傾斜を計測し、その情報を基に施肥コントローラで肥料操出用のモータの回転数を制御する。
 
 
3  リッジャ 2) で作溝した溝底へ下層の局所施肥を行い、土を寄せながら上層への局所施肥(約3~8cm、セル苗/地床苗により深さを変更)を行う(写真2)。条間45cm仕様の畝形状は、天面幅、裾幅、畝高さがそれぞれ約15cm、35cm、13cm、条間60cm仕様では、それぞれ約30cm
50cm、15cmの台形状となる。なお、上層施肥は初期生育用、下層施肥は中•後期用で、上層の施肥量は総施肥量の1割程度だ。
4  平均傾斜角度7°のほ場において、作業速度0.7~1.4m/sの範囲で傾斜の上下方向に作業を行った場合、設定繰出量に対する平均誤差が上層で0.1~1.6%、下層で0.4~2.8%であり、従来機の平均誤差5%と比較して、高速でも高い精度で肥料の操出しが行えることを確認した(表2)。
5  条間45cm仕様において、慣行機の速度が1.0m/s、開発機の速度が1.4m/sの場合、作業距離が150mの時で作業能率は約2割向上する。
6  施肥用のホースに肥料詰まりセンサ(写真3)を設けることで、ホース内の肥料詰まりによる「撒き損じ」を防ぐごとができる。
<今後の予定•期待>
  開発機は、高精度に畝内の二段に局所施肥を行うことから、慣行機と比較して施肥量の削減が期待できる。ただし、施肥量の削減を行う場合、普及指導部局と相談の上で取り組むことが推奨される。また平成30年度に市販化する予定。なお、今後はキャベツ以外の葉茎菜類への適用性について検討する予定だ。
<用語の解説>
※1 GNSSセンサ:衛星測位システムの総称(よく知られているGPSは米軍が開発したGNSSの一種)
※2 リッジャ:畝を立てるように土を寄せる機能を持った作業機(写真では見えない)
※3 鎮圧ローラ:リッジャで作った畝の表面を回転しながら締め固める円筒状のもの
 
参考図





 この件のお問い合わせお問い合わせは研究推進責任者 : 農研機構 農業技術革新工学研究センター 所長 藤村博志 研究担当者 : 同総合機械化研究領域ユニット長 大森弘美まで(電話048-654-7038)若しくは広報担当者 : 同企画部 連携推進室室長 藤井桃子まで(〒331-8537 埼玉県さいたま市北区日進町1丁目40番地2  電話048-654-7030  FAX048-654-7130  E-mail : iam-kohoml@affrc.go.jp)。