県内でも数少ない国内産大豆で味噌製造する「味噌蔵 たかむら」
冠着山(姨捨山)の麓に広がる「さらしなの里」にある『味噌蔵 たかむら』(合資会社高村商店)は、千曲市大字羽尾1320番地にある。大正八年に創業し、名月の里・姨捨の棚田のふもとで国産原料にこだわった信州みそを醸造している。
創業時は創業者正孝氏の名前に由来する「ヤママサしょうゆ」(冠着しょうゆ)を造り始め、その後に味噌醸造も開始した。昭和28年に会社を設立して(合)高村商店となった。現在の代表の昭光氏で3代目。先代までは国産の大豆・国産米のみを使用した天然醸造「聖高原みそ」というブランドで味噌製造を中心に営んできたが、昭光代表になってから「地域の味噌蔵を売りたい」という方針に変えた。
「更科というこの地域で造っていることを売りたい。地産を訴え味を変え、地域の地名やそれにまつわる言葉で更科のイメージを残したい」という思いは人一倍強かったという。また、食品の表示(原料表示等)も厳しくなったことも方針転換に拍車をかけた。代表的な商品の「棚田」は、重要文化的景観に指定されたこともあり、命名した味噌である。
「棚田」の原料の大豆は、ちくま農協にお願いして千曲市産のタチナガ八を使い、麹米も名月会の農家のお米を使う程のこだわりである。その他の味噌の「薫」「名月」「田毎」「更科」「蔵詰」もすべて国産大豆、国産米を使っている。味噌は大豆と米麹、塩で発酵して造られるが、麹の量や塩のこだわりで味が違ってくる。同社の味噌は米麹が多いため、一般的な信州味噌に比べて甘口の味噌に仕上げている。
同社の味噌造りのこだわりについて次の様に語っている。「味噌の味の基礎となる米麹。その製造は非常に繊細な作業です。日々変わる麹の声に耳を傾け、手間をかけることで良いものができます。こうしてできた麹と大豆、塩を混ぜ仕込み、じっくりと発酵させます。それぞれバラバラだった味が渾然一体となり、深いコクと旨味が生まれたところを見計らい、皆様にお届けしています。職人たちが手をかけ、心を込めて作った味噌です」。
味噌の他に醤油豆、甘酒、漬物、ジャムなども原料からの加工による手作り商品であり、昔ながらの地元の「味」、おばあちゃんの「味」を守っている。味噌を含めた各詳細は後述するとして、地元産の原料を使い「地域の味噌蔵を売りたい」という高村秋光代表(61)の方針転換とそのポリシーによる営業努力は、和食のユネスコ無形文化遺産登録で追い風になって来ているように見える。
更級と姥捨山は古くから月の名所(田毎の月)と知られ、和歌などにも詠まれてきた。平安初期の最初の勅撰和歌集『古今和歌集』に「わが心なぐさめかねつ更級や 姥捨山にてる月をみて」とあるのを始め、その後多くの歌人に詠われ、「さらしなの里」が平安時代から全国的に有名だったことが伺い知れる。また、姥捨山は「姥捨伝説」でも知られ、小説の題材にもなっている「姥捨伝説」は、「歳をとったお年寄りは山に捨てろ」という命令を無視して自分の母親をかくまった息子が、国が困った時にその母親の知恵を借りて国を救うという「棄老伝説」。この「棄老伝説」は全国各地にあるが、「姥捨伝説」はその中でも特に有名だ。
このように「更科」という地名と歴史に始まり、和食の伝統的な味噌という食材は、物語にすれば如何程にも語れる。「味噌蔵 たかむら」は、地元千曲市のお客様の他に通販やネット販売で顧客が2万人程あり、常時8千人から9千人の顧客からの注文がある。味噌は年間250トンを製造する。従業員は16名(パート含む)。本社に併設して本店売店(約70坪)には、くだんの商品の他に冠着しょうゆ、お酒、焼酎、お菓子も売られている。今も地域のよろずや的な店舗として機能している。
同社では製品化した商品の倉庫が手狭になって来たため、冷蔵倉庫及び一般倉庫を現在増設中で、3月中に完成する運びだ。また、長野自動車道上り線・姨捨SAのフードコートのラーメコーナーでは同社と共同開発したたかむら味噌ラーメンが提供されており、3月の売店オープンでは味噌や味噌を使ったパン等が販売される。
さて、同社の商品のラインナップを紹介すると、信州の薫りを届ける天然醸造みそ「薫」は、1年に一度だけの特別製法で熟成させた逸品500㌘袋入920円。寒仕込み「棚田」は地元の棚田で作られたコシヒカリを使い、塩は沖縄の「青い海」使う逸品500㌘袋入820円。こだわり12割糀みそ「名月」は米麹が120%、大豆100%の味噌で、塩は沖縄の「青い海」を使う500㌘袋入770円。12割糀みそ「田毎」は「名月」の割合と同じで500㌘袋入570円。10割糀みそ「更科」は米麹100%、大豆100%で500㌘袋入440円。以上の商品は1㌔㌘袋入もそれぞれある。
また、8割糀みそ「蔵詰」(業務用)は米麹80%、大豆100%で1㌔㌘袋入570円、2㌔㌘袋入1,120円。米・麦こうじみそ1㌔㌘袋入700円、″純田舎〟麦みそ1㌔㌘袋入600円を揃えている。この他にはちみつ味噌、ふき味噌、大根しその実、風味漬(しょうゆ漬)、唐辛子みそ、おごっそ漬(みそ漬)がある。田舎の味 しょうゆ豆は200㌘袋入300円、500㌘袋入720円がある。
味噌蔵内
製麹室
漬物では聖高原みそ漬、聖高原粕漬、信州 白うりどぶ漬け、信州 梅甘漬、信州地大根たくあん、おばあちゃんの野沢菜漬、マルトウ野沢菜漬がある。ジャムはナガノパープルジャム、りんごジャム、プルーンジャム、あんずジャム、いちじくこんぽーとも揃えている。菓子類はあんず娘 みそ葛餅、みそせんべい、お豆さん、味噌がけくるみ等がある。また、ご贈答に本格調味料詰め合わせ、みそ・そばセット、信州さらしなそばセット、みそ・しょうゆセット、千曲みそ三昧、味噌・みそ漬セット、みそ・粕漬セット、さらしなセットを1,980円~4,960円で揃えている。
逸品の甘酒(期間限定)
高村秋光代表は、小、中、高、大学、社会人野球と野球一筋のスポーツマンである。大学では部長も務め、横浜ベイスターズ監督の中畑清さんは一年後輩、元プロ野球選手の石毛宏典さんは3年後輩で昨年も同社を訪れたという。清楚で謙虚なふるまい、そして折り目正しい姿勢は「スポーツマンシップ」から来るのだろうか。人脈作りや商品づくりにも多々に活かされている気がする。
問い合わせは「味噌蔵 たかむら」((合)高村商店)
〒389-0812長野県千曲市大字羽尾1320
電子メール:info@misogura.co.jp
電話:026-276-0591
FAX:026-276-5132
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