図1記述された単語のネットワーク図
Text Mining Studio version 6.4(NTT DATA)ソフトウエアを用いて、ミニメンタルステート検査で記述された文章から作成された単語のネットワーク図を示している。矢印は文章内の単語(記述通りに記載)のつながりを示している。
発表のポイント
・軽度認知障害及び発症早期の認知症を対象者として、タマネギ加熱粉末を12週間摂取するプラセボ対照ランダム化二重盲検比較試験を実施した。
・摂取前後のミニメンタルステート検査項目の文章記述の点数を比較し、プラセボ食品に比べケルセチンを多く含むタマネギ(被験食品)で有意な改善効果を認めた。
・文章解析では前向きな表現を示す形容詞の記述が増え、また単語のつながりのある記述が増えていることが分かった。
・正常加齢者へのケルセチンを多く含むタマネギ摂取による前向きな気持ちの維持作用が、認知機能低下が始まった状態でも役立つことが示唆された。
<詳しい研究内容について>
タマネギのケルセチンは文章表現の維持に役立つ
<論文情報>
・雑誌名:Heliyon
論文名:Continuous intake of quercetin-rich onion powder may improve emotion but not regional cerebral blood flow in subjects with cognitive impairment
著者:Yuichi Hayashi, Fuminori Hyodo, Tana, Kiyomi Nakagawa, Takuma Ishihara, Masayuki Matsuo, Takayoshi Shimohata, Jun Nishihira, Masuko Kobori, Toshiyuki Nakagawa
DOI番号: 10.1016/j.heliyon.2023.e18401 <用語解説>
・注1 行動心理症状:認知症の症状は、物忘れ等の「中核症状」と精神や行動面の症状である「周辺症状」がある。行動心理症状はこのうちの周辺症状に相当し、徘徊、暴力、抑うつ、幻覚などの症状がある。
注2 軽度認知障害:自立した日常生活と全般的な認知機能に問題はないが、物忘れや記憶力の低下が存在する状態で、毎年10-15%が認知症(アルツハイマー病)に移行するとされており、前段階と考えられる。
・注3 認知症:本試験の認知症の被験者は、臨床所見と脳血流シンチ検査の結果からアルツハイマー病と考えられる。アルツハイマー病脳では神経原線維変化とβ-アミロイドの沈着が特徴だ。β-アミロイドは発症の十数年前から沈着することが分かっている。発症初期には記憶の障害、無気力やうつ症状も見られることがある。
・注4 ミニメンタルステート検査:認知機能障害が疑われる場合に実施するスクリーニング検査の一つで、時間や場所の見当識、3単語の想起、計算、物品呼称、文章復唱、口頭指示、文章記述、図形模写の項目があり、すべて正解すれば30点満点である。