2023.04.21(金)

「くず餅を科学する」をコンセプトに
新規プロジェクトを開始、創業218年目の
船橋屋

   (株)船橋屋(東京都江東区、神山恭子代表取締役)は、この度「くず餅を科学する」をコンセプトに新規プロジェクトを開始する。船橋屋では2010年にくず餅の発酵槽より独自の乳酸菌を発見•分離し、乳酸菌を活用した商品開発等を進めてきた。現在創業218年目となり、創業220周年を見据え新たな研究をスタートした。くず餅を明らかにすることで江戸時代から続く伝統菓子を後世に繋ぐべく取り組んでいく。
船橋屋として「くず餅を科学する」に取り組む理由
   くず餅は関東と関西で原料が異なる。一般的に関東のくず餅は、グルテンを取り除いた小麦を発酵させ、発酵小麦を水で溶いて蒸したものを指す。船橋屋のくず餅は、小麦でんぷんを約450日間長期間発酵させ、発酵した小麦でんぷんを複数種類配合し、職人による下準備を経てから蒸しあげることで製造されている。

   くず餅づくりでは、下準備•蒸しという製造工程において、原材料の状態、その日の湿度や気温などによって微妙な調整が必要であり、職人技が鍵を握る。そしてくず餅の製造に関わる職人達は長い期間をかけて技術を習得し、お客様に喜んで頂ける触感と風味を生み出して来た。船橋屋のくず餅は、そうした職人技の賜物であり、職人が技術を継承してきたから今があるといっても過言ではない。

   しかし、「くず餅がなぜくず餅なのか」ということについては、実はまだ多くの謎が秘められている。あの食感はどうして実現されるのか、なぜ長い時間をかけて小麦澱粉を発酵させる必要があるのか、そして最も重要な発酵小麦澱粉をくず餅に変える職人の技にはどのような科学的根拠があるのかなど、明らかにすべき項目は多岐にわたる。

   そこで、この度一般社団法人100年経営研究機構と連携し、「くず餅を科学する」をコンセプトに、長く愛されてきたくず餅そのものと200年以上培われてきたくず餅製造技術について、科学的に明らかにする取り組みを開始した。各分野の研究者•専門家の皆さまと共に取り組みを進めていく。
研究者•専門家紹介
■赤池 学氏
(株)ユニバーサルデザイン総合研究所 所長/科学技術ジャーナリスト/一般社団法人100年経営研究機構 顧問

   1000年、100年の歴史を持つ日本の長寿命企業のベスト3は、食品加工業、酒造業、旅館業である。共通していることは、農林水畜産の生物資源を活用したビジネスであることだ。私はこうした事業を、自然や生物に学ぶものづくり、「生物規範工学」として捉え、これまで数多くの商品、施設、地域開発を手掛けてきた。季節や産地が異なる生物を活用した商品の背景には、繋がりがあり、循環する、複雑な自然生態系のメカニズムが存在する。それを読み解き、デザインしてきたのが、熟練技能を持つ日本の職人たちだ。「たかが”くず餅”、されど”くず餅”」。その秘密を船橋屋さんと共に、解き明かしていきたいという。 
■長島孝行氏
ヤマザキ動物看護大学教授

   私はこれまで生き物や生物素材のナノ構造を様々な顕微鏡を駆使して観察し、その機能性などを考えることを専門に研究してきた。食品が専門ではないが、食品も元をたどれば生物素材である。今回、日本の食文化を代表するくず餅を観察する機会を得て、あの独特な食感がどういう構造から生まれるのか、そしてその構造がどう構築されているのか、ナノレベルの構造解析を通じてメカニズムを科学的に解き明かしていこうと考えている。
■岡田早苗氏
高崎健康福祉大学農学部教授/東京農業大学名誉教授/木曽町地域資源研究所所長

   乳酸菌研究を専門にしている。日本およびアジア地域の伝統発酵食品に関わる乳酸菌の研究を続けてきた。乳酸菌は乳酸を作るだけでなく、食品原料に含まれる様々な成分を違う成分に転換させる力を持っている。乳酸菌のそれらの力は小さいものかもしれないが、できあがった発酵食品の味覚、香り、触感などに微妙に影響を与えていると考えている。現在、乳酸菌のささやかな力に注目し、研究を続けている。
今後の展望

   今後は船橋屋の科学コミュニケーションの一環として、下記特設HPにおいて研究成果や、関わっていただく研究者や専門家の皆様とくず餅職人との対談、さらには複雑なくず餅の製造工程をわかりやすくお伝えするなど、くず餅の秘密について情報発信させていただく。  

【特設HP】https://www.funabashiya.co.jp/research/
   くず餅という伝統的発酵食品の価値を改めて発信することにより、くず餅を次世代に繋げ日本の発酵文化の継承への貢献を目指していく。
一般社団法人100年経営研究会機構 伴走型事業開発支援事業(Do-Tank NEXT100)について

   一般社団法人100年経営研究会機構は、「100年経営を科学する」をコンセプトに、2015年に設立された。日本国内を中心に100年以上続く長寿企業のデータアーカイブ構築、調査研究、更に研究会や視察などを通じた情報発言を通じて、永く持つ経営の原理原則や叡智を共有する活動をしている。また、機構では長寿企業のイノベーションを促進するために次の100年に向けた伴走型事業開発支援事業(Do-Tank NEXT100)を開始し、長寿企業の研究や事業開発を支援している。■一般社団法人100年経営研究会機構
公式ホームページ https://100-keiei.org/
 
船橋屋について

   1805年江戸時代に創業し、2023年で創業218年目を迎えた関東風のくず餅屋。船橋屋のくず餅は、「小麦澱粉」を450日乳酸発酵させて蒸し上げる【和菓子唯一の発酵食品】。長期間乳酸発酵させているからこそ、独特の歯ごたえと弾力が生み出される。また、自然のものをそのままお客様にお届けしたいという想いから、保存料を使わない自然な製法にこだわり続けている。発酵食品であり、無添加である伝統和菓子が今、健康を意識する人々から注目されている。
■船橋屋公式ホームページ
http://www.funabashiya.co.jp/