2024.09.13(金) |
日清オイリオグループと農研機構の共同研究
フライ食品のおいしさを表現する用語の体系化
日本食品科学工学会第71回大会にて発表
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日清オイリオグループ(株)(久野貴久社長)と国立研究開発法人農業•食品産業技術総合研究機構(久間和生理事長)の研究グループは、「食品のおいしさ」を官能評価の観点から追及し、それを活用したおいしい食品や新しいおいしさを持った食品の提供を通じて、人々のより豊かな生活を提案•創造するための共同研究を進めている。
おいしさの評価に重要な官能評価の精度向上を目指し、農研機構の官能評価系構築(評価用語の体系化)に関する技術と日清オイリオの油脂•油調食品に関する研究開発技術を掛け合わせ、コロッケの官能評価用語を体系化した。この評価用語体系の活用は、フライ食品の特性のより正確な評価や、さらなる品質向上につながると考えられる。
同研究グループは、この研究の成果を日本食品科学工学会第71回大会(会期:2024年8月29日~31日)において発表した。
【研究の背景と目的】
近年、市販•業務用のフライ食品の需要が増加している。それに伴い、フライ食品のおいしさを構成する要素(衣のサクサクした食感や食欲をそそる香り、見た目等)を数値化する技術に対するニーズが高まっている。コロッケをはじめとするフライ食品のおいしさという価値を向上させるには、分析機器による評価だけではなく、「人が実際に食べてどう感じるか」という官能評価の視点が重要だ。
官能評価はフライ食品が消費されるまでのあらゆる工程(原料メーカーや食品メーカーにおける研究開発•生産~加工•流通工程および、その先の消費者が購入して食べる消費工程)に深く関わっており、おいしさ価値についての共通理解を形成するために重要となっている。しかし、官能評価に用いる言葉(評価用語)の定義や用途が人や組織によって違うことで、官能評価の精度が低くなることが課題となっていた。そこで同研究グループは、フライ食品の官能評価の精度向上とコミュニケーションの円滑化を目指し、コロッケの官能評価用語体系を構築することを目的に、共同研究を実施した(図1)。

【研究の概要】
1.本研究ではまず代表的なフライ食品であるコロッケを対象とし、そのおいしさに関連する評価用語体系を開発した。市場に流通しているコロッケの特徴を網羅するように調製した50種類のモデルコロッケについて、16名の熟練した評価者が感じた特徴を言葉で表した。これにより外観/喫食前の香り/喫食中の風味/食感について約600語の表現を収集した。これらの表現について整理、整理統合、分類し、各用語に定義を付け、最終的に75語からなるコロッケの官能評価用語体系を構築した(図2)。

2.次に開発した評価用語体系の性能を評価するために、市販のコロッケを対象とした官能評価を実施した。まず評価用語リストの中から特にフライ食品の評価において重要だと考えられる主要用語を32語選定し、それぞれの強度を評価するための尺度見本(官能評価において点数をつける際に見本として参照するための試料)を設定した。その後これらの主要用語を評価項目として15種類の市販コロッケを対象とした官能評価を実施し、得られた結果を統計解析手法によって解析したところ、開発した評価用語体系は各種コロッケの特徴を的確に捉えており、おいしさに関わるフライ食品の品質特性を数値化する官能評価手法として有用であることが示された。
【今後の展望】
今後、今回選択した32語の主要用語以外にも尺度見本を設定し、また全用語に類義語を拡充させる予定だ。こうした評価用語体系の実用化により、組織間で品質情報を共有する際に参照資料とするコミュニケーションツールとしての機能がさらに強化され、フライ食品のおいしさに関わる特性の評価精度や共感度を向上することが可能になる。これにより製品開発のスピードアップや、より精緻な品質管理が可能になる。さらに実用化された評価用語が普及することで、フライ食品に関わる消費•開発•研究•生産•流通に携わる多くの人々の間のコミュニケーションを助けることにつながると期待される。
体系的な官能評価を通じて、食用油脂がフライ食品のおいしさに与える影響や機能をより詳細に可視化できるようになり、フライ食品における油脂の魅力を最大限に引き出すことが可能となる。同研究グループは、食品のおいしさを精密に評価する技術を究め続けることで、よりおいしい食品や新しいおいしさを持った食品を創り出し、人々により豊かな生活を届けるための研究を推進していきます。
【発表内容】
日本食品科学工学会第71回大会※
発表タイトル:フライ食品の官能評価語体系の開発
発表者:長井香1、千葉典子1、中野優子2、青柳寛司1、赤羽明1、上原秀隆1、早川文代2
(1. 日清オイリオグループ(株)、2. (国研)農研機構 食品研究部門)
※台風接近の影響を受けて対面開催は中止されましたが、主催者側より「プログラム•講演要旨の公開をもって講演•発表が行われたものとみなす」との見解が発表されている。
この件に関するお問い合わせは日清オイリオグループ(株) 広報部まで(電話03-3206-5109 〒104-8285 東京都中央区新川一丁目23番1号)。
農研機構食品研究部門 研究推進室 渉外チーム
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