2023.11.27(月

「令和5年度 全国優良経営体表彰」の発表
6次産業化部門で農水大臣賞に松川町の
(株)なかひら農場(中平義則代表)

   農林水産省及び全国担い手育成総合支援協議会は、令和5年度全国優良経営体表彰の各賞(経営改善部門、生産技術革新部門、6次産業化部門、販売革新部門、働き方改革部門、担い手づくり部門)の受賞者を決定した。なお、令和6年2月28日(水)に開催される「第25回全国農業担い手サミット」の全体会において、農林水産大臣賞受賞者の表彰式を行う。
全国優良経営体表彰の概要>
   農林水産省及び全国担い手育成総合支援協議会は、意欲と能力のある農業者の一層の経営発展を図るため、昭和61年から農業経営の改善や地域農業の振興•活性化に優れた功績を挙げた農業者を表彰している。この度、経営改善、生産技術革新、6次産業化、販売革新、働き方改革、担い手づくりの各部門における、農林水産大臣賞、農林水産省経営局長賞及び全国担い手育成総合支援協議会会長賞を決定(計38経営体)した。
(表彰の対象となる取組)
〇経営改善部門
   自らの農業経営の改善、規模拡大や所得向上などの取組 ※農業分野における女性活躍の観点から、女性が経営に参画する経営体にあっては「女性活躍」として表彰
(1)農林水産大臣賞 2経営体
(2)農林水産省経営局長賞 4経営体
(3)全国担い手育成総合支援協議会会長賞 13経営体
〇生産技術革新部門
   生産現場におけるロボット技術による作業の効率化、ICTによる生産管理、複数作業を可能とする農業機械による低コスト化などの農業経営における先進的な生産技術の活用の取組
(1)農林水産大臣賞 2経営体
(2)農林水産省経営局長賞 3経営体
〇6次産業化部門
   食品産業や他の農業者等と緊密に連携して実施される農業生産と一体となった加工•販売や地域資源を活用した新たな産業の創出を促進する6次産業化(輸出を含む)の取組
(1)農林水産大臣賞 1経営体
(2)農林水産省経営局長賞 1経営体
〇販売革新部門
   消費者ニーズを踏まえた独自の市場開拓、特色ある農産物の強みを生かした生産•販売などの顧客に新たな価値を提供する独創性のある農業経営の取組
(1)農林水産大臣賞 2経営体
(2)農林水産省経営局長賞 2経営体
(3)全国担い手育成総合支援協議会会長賞 3経営体
〇働き方改革部門
   生産性が高く「人」に優しい職場環境づくり(農業の「働き方改革」)の取組
(1)農林水産大臣賞 1経営体
(2)全国担い手育成総合支援協議会会長賞 2経営体
〇担い手づくり部門
   担い手の経営発展を支えるための農業技術の指導、経営相談への対応などの取組、新規就農希望者や独立•自営就農希望者の研修受入れなどの次世代の経営体を育成する取組及び農地中間管理事業等を活用し農地の集積•集約化に関する現地でコーディネートなどを行った取組
(1)農林水産大臣賞 1経営体
(2)農林水産省経営局長賞 1経営体
 
農林水産大臣賞の受賞者>
経営改善部門
新潟県弥彦村 農事組合法人サンファーム大戸
代表 中川 巧(なかがわ たくみ)氏

経営規模:70.7ha(水稲54.4ha、枝豆8.7ha、大豆7.5ha、イチゴ0.1ha)
受賞のポイント
   平成5年に水稲20haで前身となる「大戸水稲生産組合」を立ち上げ、平成12年に枝豆を導入、平成15年にイチゴの高設栽培を開始するなど、地域に先駆けて稲作と園芸の複合経営に取り組み、平成19年3月に園芸複合型法人として設立した。
   平成29年には、村内の他の2法人と連携してJGAP認証を取得し、更なる発展に向けて、村がブランド化した「伊彌彦米(いやひこまい)」のうち独自要件(JGAP認証)を満たしたものを「プレミアム伊彌彦米」として商品化した。また、一定の生産量が確保できるようになった段階で3法人合同して販売会社を設立することで、米の有利販売体制を構築した。
   また、3法人で機械共同利用組合を設立し、枝豆コンバインを導入するとともにオペレーターを法人間で出し合う形で共同作業を実施しており、こうした取組を県内初となる労務の法人間連携協定として令和5年3月に締結した。

滋賀県近江八幡市 株式会社イカリファーム
代表 井狩篤士(いかり あつし)氏

経営規模:254.6ha(大豆86.9ha、水稲84.5ha、小麦83.2ha)
受賞のポイント
   先代は稲作中心の経営であったが、現社長は作目ごとに利益率を算出し、利益率の高い麦や大豆を主力に据えた経営にシフトさせた。毎月1回、社員に提示する米や麦、大豆の品種ごとの損益計算データをもとに、社員全員で収益改善や作付面積配分等を検討し、収量や売上目標を明確にした。
   平成25年から生産管理ICTツールを導入し、データを活用した栽培管理を行うことで作業の効率化を図るとともに、従業員たちが意見を出し合いながら、自分たちの力で作業方法を改善する手法を導入したことで、社員が主体性を持って無駄なく作業を行う環境づくりを行った。
   日本産の小麦のニーズが高まると予測し、平成17年産からパン用小麦を試作し、栽培技術の蓄積や乾燥調製施設等の整備を行いながら規模拡大に取り組んできた結果、現在では学校給食や大手コンビニのパンの原料として採用されるなど、多様な販路を確保した。現社長の妻が主導して人材育成や女性が中心となって加工品の開発やイベントを運営等をし、女性が活躍する場を積極的に創出した。
 
生産技術革新部門
宮城県石巻市 株式会社デ・リーフデ北上
代表 鈴木嘉悦郎(すずき かえつろう)氏

経営規模:ハウス2.4ha(トマト552t、パプリカ264t)
受賞のポイント
   東日本大震災で壊滅的被害を受けた北上地区において、平成26年に地域農業の再生と地域雇用機会の創出を目的に設立した。オランダの施設園芸にヒントを得て、高度環境制御技術等を活用しながら、自社の経営に合わせた運営方法を探り、独自の運営体制を確立した。
   日照や温度などのデータに基づいた生産管理、AIによる生育診断や収量予測によって、必要となる作業量を把握することで、人件費の低減を図った。また、単収改善や廃棄率減少を実現した結果、安定出荷が可能になり、大手企業との取引にもつながった。
   スマートフォンのアプリを活用した労務管理システムを導入したことで、個々の作業量や時間を可視化し、無駄のないシフト管理が可能となり、従業員個々の資質や事情に合わせた管理を実現した。子育て世代の女性でも働きやすい労務環境となったため、離職率が低下し、従業員の熟練度向上につながった。
鹿児島県出水市 有限会社さつま農場
代表 道上裕治(みちうえ ゆうじ)氏

経営規模:養豚10,650頭、飼料用米1.3ha
受賞のポイント
   親族の経営する養豚経営を、8千万円の負債ごと買い取る形で農業に新規参入した。基本技術の改善を徹底的に行うことで習得した高い技術力と強い探求心を持って飼養環境の改善に取り組み一代で母豚約380頭、売上高5億円を超える県内トップレベルの養豚一貫経営を確立した。養豚の衛生対策については、風向き等を考慮した農場設計や製薬会社等と連携したワクチネーションプログラムの実施など、様々な工夫を重ねながら強化を図った。
   採卵鶏経営における光線管理で産卵数を向上させる技術を豚に転用することを検討し、照度センサー等を使用した光線管理の実験を繰り返して技術を確立した結果、繁殖成績が向上し、一腹あたり分娩頭数が1.5頭増加した。肥育豚の飼料に飼料米を取り入れ、ステージ毎に配合割合を調整しながら給餌している。また、肉質改善のために飼料の研究を重ねながら、サツマイモや温泉水を加えた結果、肉質が向上し、ブランド豚として高価格での取引を実現できている。
 
6次産業化部門
長野県松川町 株式会社なかひら農場
代表 中平義則(なかだいら よしのり)氏

経営規模:リンゴ11.0ha、ジュース製造180万ℓ
受賞のポイント
   以前はリンゴ生産主体の経営を行っていたが、安定した経営を目指して農産加工や観光農業に着手した。現在では、ジュース製造を主体とした加工部門の売上げが全体の9割以上を占める。リンゴの生産にあたっては、地元企業と連携して開発した活力剤やジュース加工過程で出る残渣を活用した肥料を利用することで、減農薬栽培を行っている。
   他社との製品の差別化を図るため、イタリアの機械メーカーとの機械の共同開発やブランドイメージの形成を行うなど、製造から販売に至るまで、様々な顧客ニーズにこたえられるようジュースやスムージー、ジャムなど40種類以上の加工品を製造している。地域の農家と共に6次産業化を発展させたいという理念のもと、これらの加工品の原料には地元産の果実や野菜などを積極的に用いるほか、加工工場では地元住民を中心に40人を超える雇用を創出した。
   また、果樹農業を維持するとともに担い手を育成する目的で「南信州りんご大学院」を独自に創設し、栽培技術から経営知識まで指導、独立就農をサポートするなど地域振興にも貢献した。
 
販売革新部門
群馬県高崎市 佐藤 勲(さとう いさお)氏

経営規模:ハウス0.4ha(花壇苗650,000鉢)
受賞のポイント
   就農前にアメリカの農業研修生として過ごした際に目の当たりにした、生産者自身が販売価格を設定するという市場動向の影響を受けない経営手法を、自身の経営では大型園芸店と連携して全量を定価で全国の様々な園芸店へ直接販売する形で実現している。
   開花期に合わせて開催する「パンジー•ビオラ見学会」に顧客を招待し、試作品種についての人気投票や新品種に求める特徴についてのアンケートを行うことで、消費者ニーズの把握に努め、オリジナル品種の開発にいかしている。
   取引先の園芸店にはオリジナル品種の名付け親になってもらう、顧客には「パンジー•ビオラ見学会」を主導してもらう取組等により、関係者のオリジナル品種への愛着を高めるとともに、販売戦略に巻き込んでいる。生産者自身は消費者ニーズを把握でき、顧客はニーズを伝える場があることで好みの品種が開発されるという、関係者全員にメリットがある環境づくりをしている。
徳島県上板町 有限会社NOUDA
代表 納田明豊(のうだ あきとよ)氏

経営規模:養豚1,440頭
受賞のポイント
   平成18年に現代表が後継者がおらず廃業寸前であった養豚会社を継承し、平成25年に現社名に変更した。経営継承後は経営を安定化させるためには、他社との差別化が必要と考えてブランド化に注力した。
   県のブランドサツマイモである「なると金時」を食べて育った豚の肉質が良くなることから、近隣のサツマイモ農家から規格外品を集めてエサとして利用する体制を整え、こうして育てた豚を「阿波の金時豚」として自社ブランド化(商標登録)した。また豚のストレスを低減するために豚舎におがくずをバイオベットとして採用する等、意欲的に品質の向上のための技術導入を図った。 
   また自社で食肉加工できる体制を整備し、常に肉質を確認しながら高品質で多様な加工品を製造できるようになった。オンラインショップでは、ウインナー等の加工品や多様な規格の豚肉を市場を通さないことなどで経費を節減し、消費者に比較的安価に販売していることから、全国各地との取引が実現している。
 
働き方改革部門
熊本県益城町 株式会社みっちゃん工房
代表 光永カオリ(みつなが かおり)氏

経営規模:ベビーリーフ3.0ha
受賞のポイント
   平成16年に家業である野菜農家に親元に就農、平成22年には経営を継承、平成27年に現法人を設立した。女性でも栽培や作業がしやすい作物としてベビーリーフの栽培を開始し、現状では約3haに拡大した。従業員が意欲を持ち、精神的に安心して働けるようにするためには、働きやすい環境の整備や従業員との信頼関係の構築が重要との考えから「人を豊かに、食卓を豊かに、社会を豊かに」という経営理念を掲げ、働き方改革に着手した。
   女性が多い職場のため、ライフステージが変化しても仕事を続けることができるよう、完全週休二日制の導入や有給休暇の取得促進(隔月での取得義務付け)、育児•介護休業等の導入を進めており、これまでに育児•介護休業を利用した従業員全員が職場復帰を実現している。
   また、従業員との信頼関係を築くため、毎年の決算報告会の開催や定期的な面談の実施により従業員への情報開示や対話を行う場を設定した。特に決算報告会は売上と利益が増加した際における賃上げを約束することなどにより、従業員のコスト意識を醸成する場として機能している。こうした従業員に寄り添った「働き方改革」を行うことで、求人に対して県外から応募があるとともに、雇用した従業員の定着にもつながっている。
 
担い手づくり部門
埼玉県加須市 有限会社早川農場
代表 早川良史(はやかわ よしちか)氏

経営規模:78.0ha(水稲55.0ha、麦類18.0ha、作業受託5.0ha)
受賞のポイント
   後継者や担い手が不足している加須市の農業を活性化し、将来を担う若手を育成するため、農家•非農家を問わず従業員や研修生として積極的に受け入れて、機械操作、生産•販売等に関する経験を積ませる独立就農に向けた「人づくり」を実践している。
   また、独立就農する際にある程度大きな初期投資が必要となるが、同法人が所有する機械や施設を共同利用できるようにすることで負担軽減しているほか、労働力が必要となる時期に従業員を派遣するなど、(有)早川農場から独立した新規就農者の経営が安定するまで全面的にサポートを行っている。
   このほか、平成25年に加須市内の若手農業者による青年農業者組織の設立を主導し、初代会長として地元農業の魅力や農産物の紹介などを積極的に行うとともに、孤立しがちな若手新規農業者を取り込んだ地域農業の「仲間づくり」に取り組んでいる。
 
表彰式>
   農林水産大臣賞の表彰式は「第25回全国農業担い手サミット」の全体会にて行う。担い手サミットは意欲ある農業者が一堂に会し、農業経営の現況や課題についての認識を深めるとともに相互研鑽•交流を行うことを目的に、毎年度開催されている。
日時:令和6年2月28日(水曜日)13時30分から
会場:イイノホール
所在地:東京都千代田区内幸町2ー1ー1 飯野ビルディング4階
<添付資料>
令和5年度全国優良経営体表彰・受賞者一覧(敬称略)(PDF : 140KB)
 
   この件のお問い合わせは農林水産省 経営局経営政策課 (担当)原田、足利まで(電話03-3502-811
  ダイヤルイン03-3502-6441)。