2023.06.01(木) |
切り花の日持ちが優れるダリアエターニティシリーズの新品種
「エターニティピーチ」「エターニティシャイン」種苗生産のための
原種苗提供予約を開始(農研機構)
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農研機構は、優れた日持ち性とその美しさにより全国への普及が進んでいる良日持ち性ダリアエターニティシリーズに、美しい複色花色や落弁しにくいなどの新たな特性でバリエーションを拡大した「エターニティピーチ」「エターニティシャイン」の2品種を育成し、この度種苗生産のための原種苗予約を開始した。特徴である優れた日持ち性を活かし、新品種の全国への普及が期待される。
日持ちは消費者が花を選ぶ際のポイントの一つで、花きにおける最も重要な育種目標の一つだ。ダリア(Dahlia variabilis)は、豪華な巨大輪から清楚な小輪まで大きさや花型のバリエーションに富み、多彩な花色を有することから人気の切り花品目として切り花流通量が増加している。
一方でダリアには日持ちが短いという欠点があり、消費のさらなる拡大には日持ち性の改良が強く望まれている。農研機構では2014年からダリアの日持ち性を向上させる育種研究に取り組んできた。2020年に育成した良日持ち性ダリアエターニティシリーズ3品種(「エターニティトーチ」「エターニティロマンス」「エターニティルージュ」)は、優れた日持ち性とその美しさから、生産者や小売業者等の実需者からの評価が上昇し、全国への普及拡大が進んでいる。
この度、そのエターニティシリーズに新たな特性でバリエーションを拡大した、良日持ち性でかつ美しい複色花色の「エターニティピーチ」、良日持ち性でかつ落弁しにくく流通適性に優れる「エターニティシャイン」の2品種を育成し( 図1)、下記の通り種苗生産のための原種苗提供の予約を開始した。新品種は早生で生産性にも優れ、切り花としてのダリアの一層の全国普及が期待される。
図1「エターニティピーチ」(左)、「エターニティシャイン」(右)
予約期間:2023年5月23日から2023年6月15日まで
原種苗配布:2024年3~5月予定(有償配布になる)
申し込み先:農研機構野菜花き研究部門 研究推進室渉外チーム 大西佳那(e-mail yoyaku-daria@ml.affrc.go.jp FAX029-838-6673)。
留意事項 :原種苗提供時に2つの契約を締結する。
•利用許諾契約 : 農研機構と利用許諾団体間の契約。なお、利用許諾は種苗の生産•販売を行う業者、地方公共団体、農林漁業者の組織する団体(農業協同組合等)等と締結する。生産者個人とは締結できない。
原種苗提供契約 : 農研機構野菜花き研究部門と利用許諾団体間の契約。利用許諾について詳細は農研機構ホームページ「品種の利用方法」のページ( https://www.naro.go.jp/collab/breed/breed_exploit/index.html)をご覧下さい。
<関連情報>
予算 : 農林水産省委託プロジェクト研究「国産花きの国際競争力強化のための技術開発」(課題番号15653424; 2015~2019年)、農林水産省農産局「ジャパンフラワー強化プロジェクト推進」(2021年、2022年)
「エターニティシャイン」品種登録出願番号:「第36389号」(2022年7月29日出願、2022年10月17日出願公表)
お問い合わせ先など
研究推進責任者 : 農研機構野菜花き研究部門所長 松元哲
研究担当者 : 同野菜花き品種育成研究領域グループ長補佐 小野崎隆
広報担当者 : 同研究推進室 仁木智哉
<詳細情報>
開発の社会的背景
ダリアは全国的に生産•消費が拡大している新規有望花き品目だ。東京都中央卸売市場におけるダリア切り花の取扱金額は、2009年からの10年間で1.8倍増加している。(株)大田花き花の生活研究所によると、2020年のダリアの生産額は28.2億円と推定されており、切り花の重要品目としての成長が期待されている。しかしながら、ダリアには他種の花と比較すると切り花の日持ち性に劣るという大きな欠点があり、そのため家庭での観賞用、日持ち保証販売用、切り花輸出用には不向きとされてきた。
ダリアの需要は、新型コロナウイルス感染拡大前には結婚式等のイベントなど業務用需要が主でしたが、ここ数年、小売店での取り扱いが増加し、家庭用需要が増えている。切り花の家庭用需要の拡大にともない、日持ち性に優れた品種が望まれており、ダリアを業務用だけでなく家庭での観賞向けの切り花として定着させるためには、日持ち性を重視した品種の開発を進める必要がある。
研究の経緯
農研機構では、2014年からダリアの日持ち性を向上させる育種研究に取り組み、2020年に日持ち性に優れるダリア3品種、暗赤色の「エターニティトーチ」、濃桃色の「エターニティロマンス」、深赤色の「エターニティルージュ」を育成した( 図2)。
これらの品種は2022年秋から花き市場への出荷が始まっているが、特にダリアという品目を好んで仕入れされる小売店や業者での評価が上昇し、消費者の人気も高まっている。現状のエターニティシリーズは3色のみだが、追加品種による花色等のバリエーション拡大に期待が高まっている。
農研機構では、 交雑育種 1)によるさらなる日持ち性の向上とともに、 エチレン 2)の作用による輸送時の落弁が生じにくいエチレン低感受性など、切り花輸出に適する流通適性を備えた品種開発についても、検討を進めてきた。
新品種「エターニティピーチ」「エターニティシャイン」の特徴
1「エターニティピーチ」( 図3)の日持ち日数は、一般品種の「かまくら」と比べると1.2~1.6倍( 表1)。「エターニティピーチ」の花は、全体が桃色で中心が白く抜ける美しいグラデーション花色で観賞性が高く、 露心 3)がほとんど発生しない。早生で生産性が高く、上向き咲きなので、アレンジメントやブーケなどに使いやすい花型だ。
2「エターニティシャイン」( 図4)の日持ち日数は、「かまくら」と比べると1.5~2.9倍( 表1)。夏季高温期(7~8月)採花の 抗菌剤液 4)や、高温下(28°C •GLA液 5))での日持ち日数が、それぞれ「かまくら」の2.9倍、1.5~2.0倍と、高温下の日持ち性に優れるので、地球温暖化への適応に対応する「みどりの食料システム戦略」にも貢献する育種成果である。早生で生産性が高く、露心がほとんど発生しない。
3 両品種の花の直径は約11~13cmであり( 図3および 図4)、ホームユース向けに使いやすい中輪品種だ。
4「エターニティシャイン」は、エチレン低感受性であるため落弁が生じにくく、流通適性に優れる。宮崎県の生産地からの長距離輸送後のGLA液での日持ち日数は、既存の良日持ち性品種の6.2日に対し、「エターニティシャイン」では15.2日と約2.5倍でした( 図5)。
品種の名前の由来
日持ちが優れる品種という特徴から、英語で「永遠」を意味する「エターニティ(eternity)」を冠したエターニティシリーズとして命名した。「エターニティピーチ」は桃のようなかわいらしい花色であることから、「エターニティシャイン」は夏季の強光(Sunshine)や高温下でもよく育ち、光輝くような濃桃色なので"永遠の輝き"という意味を込めて、それぞれ命名した。
今後の予定・期待
2020年に育成した「エターニティトーチ」「エターニティロマンス」「エターニティルージュ」( 図2)は、2022年夏から民間種苗会社2社により営利生産用のセル成型苗の販売が開始され、優れた日持ち性とその美しさで、生産者、市場関係者、小売店等の実需者からの評価が上昇している。2023年からは本格的に苗販売されるので、全国各地で切り花が生産•出荷されて、普及拡大が進む予定だ。
今回追加された「エターニティピーチ」「エターニティシャイン」についても、2024年夏以降に苗販売が開始される見込みで、2024年11月には一般の花屋さんの店頭に並ぶ予定だ。開発した良日持ち性ダリアエターニティシリーズの普及を通じて、ダリア切り花全体の消費拡大、ニーズ向上が期待される。農研機構では、さらに日持ち性の向上した超長命性品種の育成や、花色•花型等のバリエーション拡大を目指した育種研究を進めている。
日本産の高品質な切り花は、海外でも高い関心が持たれている。ダリア切り花についても、「エターニティシャイン」のような流通適性を有する品種の利用により、今後の攻めの農林水産業を実現するための有望な輸出切り花品目になることが期待できる。エターニティシリーズに適応した輸出対応技術の開発にも将来取り組みたいと考えている。
原種苗入手先に関するお問い合わせ
原種苗については、概要にも記載したように以下の連絡先にお問い合わせ下さい。
農研機構野菜花き研究部門 研究推進室渉外チーム 大西佳那(e-mail yoyaku-daria@ml.affrc.go.jp FAX029-838-6673)。
利用許諾契約に関するお問い合わせ
下記のメールフォームでお問い合わせ下さい。農研機構HP【品種についてのお問い合わせ】 https://prd.form.naro.go.jp/form/pub/naro01/hinshu
なお、品種の利用については以下もご参照ください。農研機構HP【品種の利用方法についてのお問い合わせ】 https://www.naro.go.jp/collab/breed/breed_exploit/index.html
用語の解説
交雑育種
品種•系統間で交雑を行って、多様な変異を示す雑種集団を作り、その中から優良な形質を持つ個体を選抜する育種法。
エチレン
切り花の老化(花弁の萎凋や落弁)を促進する作用を持つ植物ホルモンの一つ。エチレンは植物のどの部位からも発生するが、特にリンゴ、バナナ、メロンなどの果実から多量に発生する。ダリアの落弁はエチレンの作用によって引き起こされるが、一部の品種では輸送中の落弁が問題となっており、ダリアへエチレン低感受性を付与することにより、輸送適性が向上する。
露心
ダリアの花には花弁が筒状になった中心部の管状花と、下部が筒状で上部が平らで舌状に伸びている舌状花の2種類の小花がある。ダリア八重咲き品種は、ほぼ舌状花から構成されるが、秋が深まり日長が短くなると、舌状花の割合が減少し、開花直後から中心部の管状花がむき出しになる露心が発生する。露心したダリア切り花は低品質と評価されるので、品種選定では露心しにくいことが重視される。
抗菌剤•ケーソンCG
切り花の品質を保持するために使用するイソチアゾリン系抗菌剤。導管内での細菌の増殖を抑え、水あげ悪化を抑える効果がある。なお、ケーソンCG(ダウ・ケミカル日本(株))原液には、抗菌作用のある有効成分として11.3 g・L -1の5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CMIT)と3.9 g・L -1の2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MIT)が含まれている。
GLA液
1%グルコース+ ケーソンCG 4)0.5 mL・L -1+硫酸アルミニウム50mg・L -1から構成される品質保持剤(切り花の品質を保持するために使用される薬剤)。
<参考図>
図2 2020年育成のエターニティシリーズ3品種
「エターニティトーチ」(左)、「エターニティロマンス」(中央)、「エターニティルージュ」(右)
図3「エターニティピーチ」の切り花
図4「エターニティシャイン」の切り花
表1ダリア「エターニティピーチ」、「エターニティシャイン」の日持ち日数(日)
図5 宮崎県の生産地で採花し、農研機構(茨城県つくば市)へ長距離輸送後10日目の切り花
(左)既存の良日持ち性品種、(右)「エターニティシャイン」
茎長60cmの切り花を品質保持剤GLA液1.5L入りの銀筒に生け、23°C、相対湿度70%、12時間日長条件で10日目((発送2023.2.8.到着2.10.品質保持剤入りの立箱で湿式輸送、クール便)。
日持ちは消費者が花を選ぶ際のポイントの一つで、花きにおける最も重要な育種目標の一つだ。ダリア(Dahlia variabilis)は、豪華な巨大輪から清楚な小輪まで大きさや花型のバリエーションに富み、多彩な花色を有することから人気の切り花品目として切り花流通量が増加している。
一方でダリアには日持ちが短いという欠点があり、消費のさらなる拡大には日持ち性の改良が強く望まれている。農研機構では2014年からダリアの日持ち性を向上させる育種研究に取り組んできた。2020年に育成した良日持ち性ダリアエターニティシリーズ3品種(「エターニティトーチ」「エターニティロマンス」「エターニティルージュ」)は、優れた日持ち性とその美しさから、生産者や小売業者等の実需者からの評価が上昇し、全国への普及拡大が進んでいる。
この度、そのエターニティシリーズに新たな特性でバリエーションを拡大した、良日持ち性でかつ美しい複色花色の「エターニティピーチ」、良日持ち性でかつ落弁しにくく流通適性に優れる「エターニティシャイン」の2品種を育成し( 図1)、下記の通り種苗生産のための原種苗提供の予約を開始した。新品種は早生で生産性にも優れ、切り花としてのダリアの一層の全国普及が期待される。
図1「エターニティピーチ」(左)、「エターニティシャイン」(右)
予約期間:2023年5月23日から2023年6月15日まで
原種苗配布:2024年3~5月予定(有償配布になる)
申し込み先:農研機構野菜花き研究部門 研究推進室渉外チーム 大西佳那(e-mail yoyaku-daria@ml.affrc.go.jp FAX029-838-6673)。
留意事項 :原種苗提供時に2つの契約を締結する。
•利用許諾契約 : 農研機構と利用許諾団体間の契約。なお、利用許諾は種苗の生産•販売を行う業者、地方公共団体、農林漁業者の組織する団体(農業協同組合等)等と締結する。生産者個人とは締結できない。
原種苗提供契約 : 農研機構野菜花き研究部門と利用許諾団体間の契約。利用許諾について詳細は農研機構ホームページ「品種の利用方法」のページ( https://www.naro.go.jp/collab/breed/breed_exploit/index.html)をご覧下さい。
<関連情報>
予算 : 農林水産省委託プロジェクト研究「国産花きの国際競争力強化のための技術開発」(課題番号15653424; 2015~2019年)、農林水産省農産局「ジャパンフラワー強化プロジェクト推進」(2021年、2022年)
「エターニティシャイン」品種登録出願番号:「第36389号」(2022年7月29日出願、2022年10月17日出願公表)
お問い合わせ先など
研究推進責任者 : 農研機構野菜花き研究部門所長 松元哲
研究担当者 : 同野菜花き品種育成研究領域グループ長補佐 小野崎隆
広報担当者 : 同研究推進室 仁木智哉
<詳細情報>
開発の社会的背景
ダリアは全国的に生産•消費が拡大している新規有望花き品目だ。東京都中央卸売市場におけるダリア切り花の取扱金額は、2009年からの10年間で1.8倍増加している。(株)大田花き花の生活研究所によると、2020年のダリアの生産額は28.2億円と推定されており、切り花の重要品目としての成長が期待されている。しかしながら、ダリアには他種の花と比較すると切り花の日持ち性に劣るという大きな欠点があり、そのため家庭での観賞用、日持ち保証販売用、切り花輸出用には不向きとされてきた。
ダリアの需要は、新型コロナウイルス感染拡大前には結婚式等のイベントなど業務用需要が主でしたが、ここ数年、小売店での取り扱いが増加し、家庭用需要が増えている。切り花の家庭用需要の拡大にともない、日持ち性に優れた品種が望まれており、ダリアを業務用だけでなく家庭での観賞向けの切り花として定着させるためには、日持ち性を重視した品種の開発を進める必要がある。
研究の経緯
農研機構では、2014年からダリアの日持ち性を向上させる育種研究に取り組み、2020年に日持ち性に優れるダリア3品種、暗赤色の「エターニティトーチ」、濃桃色の「エターニティロマンス」、深赤色の「エターニティルージュ」を育成した( 図2)。
これらの品種は2022年秋から花き市場への出荷が始まっているが、特にダリアという品目を好んで仕入れされる小売店や業者での評価が上昇し、消費者の人気も高まっている。現状のエターニティシリーズは3色のみだが、追加品種による花色等のバリエーション拡大に期待が高まっている。
農研機構では、 交雑育種 1)によるさらなる日持ち性の向上とともに、 エチレン 2)の作用による輸送時の落弁が生じにくいエチレン低感受性など、切り花輸出に適する流通適性を備えた品種開発についても、検討を進めてきた。
新品種「エターニティピーチ」「エターニティシャイン」の特徴
1「エターニティピーチ」( 図3)の日持ち日数は、一般品種の「かまくら」と比べると1.2~1.6倍( 表1)。「エターニティピーチ」の花は、全体が桃色で中心が白く抜ける美しいグラデーション花色で観賞性が高く、 露心 3)がほとんど発生しない。早生で生産性が高く、上向き咲きなので、アレンジメントやブーケなどに使いやすい花型だ。
2「エターニティシャイン」( 図4)の日持ち日数は、「かまくら」と比べると1.5~2.9倍( 表1)。夏季高温期(7~8月)採花の 抗菌剤液 4)や、高温下(28°C •GLA液 5))での日持ち日数が、それぞれ「かまくら」の2.9倍、1.5~2.0倍と、高温下の日持ち性に優れるので、地球温暖化への適応に対応する「みどりの食料システム戦略」にも貢献する育種成果である。早生で生産性が高く、露心がほとんど発生しない。
3 両品種の花の直径は約11~13cmであり( 図3および 図4)、ホームユース向けに使いやすい中輪品種だ。
4「エターニティシャイン」は、エチレン低感受性であるため落弁が生じにくく、流通適性に優れる。宮崎県の生産地からの長距離輸送後のGLA液での日持ち日数は、既存の良日持ち性品種の6.2日に対し、「エターニティシャイン」では15.2日と約2.5倍でした( 図5)。
品種の名前の由来
日持ちが優れる品種という特徴から、英語で「永遠」を意味する「エターニティ(eternity)」を冠したエターニティシリーズとして命名した。「エターニティピーチ」は桃のようなかわいらしい花色であることから、「エターニティシャイン」は夏季の強光(Sunshine)や高温下でもよく育ち、光輝くような濃桃色なので"永遠の輝き"という意味を込めて、それぞれ命名した。
今後の予定・期待
2020年に育成した「エターニティトーチ」「エターニティロマンス」「エターニティルージュ」( 図2)は、2022年夏から民間種苗会社2社により営利生産用のセル成型苗の販売が開始され、優れた日持ち性とその美しさで、生産者、市場関係者、小売店等の実需者からの評価が上昇している。2023年からは本格的に苗販売されるので、全国各地で切り花が生産•出荷されて、普及拡大が進む予定だ。
今回追加された「エターニティピーチ」「エターニティシャイン」についても、2024年夏以降に苗販売が開始される見込みで、2024年11月には一般の花屋さんの店頭に並ぶ予定だ。開発した良日持ち性ダリアエターニティシリーズの普及を通じて、ダリア切り花全体の消費拡大、ニーズ向上が期待される。農研機構では、さらに日持ち性の向上した超長命性品種の育成や、花色•花型等のバリエーション拡大を目指した育種研究を進めている。
日本産の高品質な切り花は、海外でも高い関心が持たれている。ダリア切り花についても、「エターニティシャイン」のような流通適性を有する品種の利用により、今後の攻めの農林水産業を実現するための有望な輸出切り花品目になることが期待できる。エターニティシリーズに適応した輸出対応技術の開発にも将来取り組みたいと考えている。
原種苗入手先に関するお問い合わせ
原種苗については、概要にも記載したように以下の連絡先にお問い合わせ下さい。
農研機構野菜花き研究部門 研究推進室渉外チーム 大西佳那(e-mail yoyaku-daria@ml.affrc.go.jp FAX029-838-6673)。
利用許諾契約に関するお問い合わせ
下記のメールフォームでお問い合わせ下さい。農研機構HP【品種についてのお問い合わせ】 https://prd.form.naro.go.jp/form/pub/naro01/hinshu
なお、品種の利用については以下もご参照ください。農研機構HP【品種の利用方法についてのお問い合わせ】 https://www.naro.go.jp/collab/breed/breed_exploit/index.html
用語の解説
交雑育種
品種•系統間で交雑を行って、多様な変異を示す雑種集団を作り、その中から優良な形質を持つ個体を選抜する育種法。
エチレン
切り花の老化(花弁の萎凋や落弁)を促進する作用を持つ植物ホルモンの一つ。エチレンは植物のどの部位からも発生するが、特にリンゴ、バナナ、メロンなどの果実から多量に発生する。ダリアの落弁はエチレンの作用によって引き起こされるが、一部の品種では輸送中の落弁が問題となっており、ダリアへエチレン低感受性を付与することにより、輸送適性が向上する。
露心
ダリアの花には花弁が筒状になった中心部の管状花と、下部が筒状で上部が平らで舌状に伸びている舌状花の2種類の小花がある。ダリア八重咲き品種は、ほぼ舌状花から構成されるが、秋が深まり日長が短くなると、舌状花の割合が減少し、開花直後から中心部の管状花がむき出しになる露心が発生する。露心したダリア切り花は低品質と評価されるので、品種選定では露心しにくいことが重視される。
抗菌剤•ケーソンCG
切り花の品質を保持するために使用するイソチアゾリン系抗菌剤。導管内での細菌の増殖を抑え、水あげ悪化を抑える効果がある。なお、ケーソンCG(ダウ・ケミカル日本(株))原液には、抗菌作用のある有効成分として11.3 g・L -1の5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(CMIT)と3.9 g・L -1の2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MIT)が含まれている。
GLA液
1%グルコース+ ケーソンCG 4)0.5 mL・L -1+硫酸アルミニウム50mg・L -1から構成される品質保持剤(切り花の品質を保持するために使用される薬剤)。
<参考図>
図2 2020年育成のエターニティシリーズ3品種
「エターニティトーチ」(左)、「エターニティロマンス」(中央)、「エターニティルージュ」(右)
図3「エターニティピーチ」の切り花
図4「エターニティシャイン」の切り花
表1ダリア「エターニティピーチ」、「エターニティシャイン」の日持ち日数(日)
図5 宮崎県の生産地で採花し、農研機構(茨城県つくば市)へ長距離輸送後10日目の切り花
(左)既存の良日持ち性品種、(右)「エターニティシャイン」
茎長60cmの切り花を品質保持剤GLA液1.5L入りの銀筒に生け、23°C、相対湿度70%、12時間日長条件で10日目((発送2023.2.8.到着2.10.品質保持剤入りの立箱で湿式輸送、クール便)。