2023.03.29(水) |
スマート農業の推進に向けた「農業経営計画
策定支援システム」の開発と社会実装に向けた
試行者の公募(農研機構)
|
---|
農研機構は、スマート農業実証プロジェクトで得たデータを活用し、スマート農業導入する際の経営メリットをシミュレーションできるアプリを開発した。本アプリの社会実装に向けて、このアプリの有効性等を検証していただける生産者と支援機関からなるグループの公募を令和5年度に予定している。
農林水産省のスマート農業実証プロジェクトでは、 技術区分 1)ごとに、スマート農業を農業経営に導入した場合の収入、経費、労働時間等を整理した経営データを収集している。農研機構はこれらの経営データを整理し、稲作部門を中心にスマート農業の効果を示す 経営指標 2)として WAGRI(農業データ連携基盤) 3)に蓄積してきた。
この度、農研機構はこれらの経営指標を活用し、スマート農業を導入しようとする農業者が、その導入効果や機械の購入等に関わる費用等を試算できるアプリ「農業経営計画策定支援システム」を開発した。スマート農業の導入効果は経営条件、地域条件によって異なるため、費用対効果が十分発揮できず過剰投資となる場合があるが、このアプリを活用することで、そのようなリスクを回避することが出来る。
農研機構では、本アプリの社会実装に向けてこのアプリを試行し、使い勝手や適用可能性、経営改善に向けた経営改善シナリオの策定等を検証して頂ける生産者と支援機関の担当者からなるグループを公募する。公募については、農研機構のホームページにおいて令和5年4月下旬に開始する予定。このような試行を通してアプリの改良を進め、今後、一般の方への公開を図っていく計画だ。
<関連情報>
予算 : スマート農業産地形成実証(令和3年度補正)
お問い合わせ先など研究推進責任者:農研機構本部 農業経営戦略部長 宮武恭一
研究担当者 : 農研機構本部 農業経営戦略部 営農支援ユニット長 松本浩一
<詳細情報>
開発の社会的背景
高齢化と労働力の減少が急速に進む中で、ロボット、AI、IoTなどの先端技術を活用したスマート農業に大きな期待がかかっている。しかし、スマート農業の導入には多くの経費を必要とする場合がある。一方、導入効果は経営条件や地域条件により異なることから、導入効果が十分発揮されなかったり、過剰投資になったりするリスクが生じており、こうしたことがスマート農業の導入を躊躇させる要因となっていた。
<研究の経緯>
農研機構は、スマート農業の導入効果の明確化を目的に、農林水産省のスマート農業実証プロジェクトにおいて、作物の収量、販売単価、作業別作業時間、費目別経費などのデータを収集してきた。そして、これらの経営データを整理し、標準的な経営指標としてWAGRI(農業データ連携基盤)に蓄積し、それらのデータをWAGRIから取り出すアプリを作成した。また、それと並行してスマート農業を導入しようとする農業者や支援機関が、計画手法についての専門的な知識なしに経営指標を用いた経営試算が行える「農業経営計画策定支援システム」の開発を進めてきた。
<研究の内容•意義>
「農業経営計画策定支援システム」は、スマート農業技術を導入した経営計画の策定を支援することを目的としたアプリケーションだ( 図1)。本アプリの利用方法は、まず経営モデルとして、気候条件(温暖地など)、地域類型(平地•中山間地)、経営規模(30haなど)、ほ場条件(大区画など)を選択する。さらに農地条件(小作料など)、労働条件(常時従事者や雇用者の人数、労働日数、労賃単価など)、固定資本条件(既存の農業機械の台数•型式など)を設定する。
最後に作物(主食用米•飼料用米など)、収量性、栽培法(移植•湛水直播など)、導入するスマート技術などの組み合わせを選択し、WAGRIに登録された経営指標を読み込んで、経営試算を行う。試算結果は自動的に算出され、旬別労働時間がグラフ表示される。利用者は、経営規模や導入技術を変えて経営試算を繰り返すことで、経営の改善目標に沿った最適なスマート農業の導入シナリオを選択することができる。これにより実際に投資を行う前にその効果や経費が確認でき、過剰投資になったりするリスクを避けることが可能となる。
<今後の予定•期待>
現在、稲作を中心に経営指標を整備してきているが、それらが営農現場の実態に十分適合するかはさらに検証が必要だ。また「農業経営計画策定支援システム」についても、利用方法や使い勝手について改善を進めていく必要がある。
そのため、農研機構では経営指標と「農業経営計画策定支援システム」の試行を希望される方を公募し、このアプリおよびアプリが用いる経営指標データを用いた試行を通してアプリの改良を進め、今後、一般の方への公開を図っていくことを計画している。
【公募予定内容】
件数:10組
公募対象:稲作部門を中心とする生産者と支援機関の担当者からなるグループ
公募時期: 令和5年4月に農研機構のホームページ(https://fmrp.rad.naro.go.jp/)で知らせる
応募条件:「農業経営計画策定支援システム」を試行し、その有効性や改善点を報告頂くことを条件とする。また、経営データとの整合性を確認するため、応募される生産者の経営情報を提供頂く場合がある。具体的な内容、様式は4月の公募の際にお知らせする。
試行内容:応募される方に対しては、農研機構の担当者より、データの活用方法、アプリの使い方、経営改善シナリオの策定等に関して、逐次、情報提供、支援を行う。また、今回の公募により得られた知見は、当該アプリの改良に反映する。
その他:本アプリはWeb上で稼働する。そのためユーザー登録を行い、IDをお知らせしてアプリを利用して頂く。経営指標はWAGRIに蓄積されているが、今回の応募に当たってWAGRIの会員になって頂く必要はない。
<用語の解説>
技術区分
スマート農業実証プロジェクトでは、作物•品種•作型•栽培方法・導入技術などの組み合わせ(例えば、「水稲•コシヒカリ•移植栽培•スマート技術」など)を総称して「技術区分」とし、それぞれごとに経営データを収集している。
経営指標
地域条件(温暖地など)、経営規模(30haなど)、圃場条件を基礎に、10a当たりの収量、販売単価、費目別経費、作業別労働時間などのデータを経営指標と呼んでいる。
WAGRI(農業データ連携基盤)
農業の担い手が、データを使って生産性の向上や、経営の改善に挑戦できる環境をつくるために作成された仕組みであり、データの連携や提供機能を持つ。
発表論文
松本浩一(2019)スマート農業技術の経営的評価手法の評価と展望―水田作経営を中心に― 、農研機構研究報告(1)33-37
<参考図>
図1 「農業経営計画策定支援システム」の利用イメージ
農林水産省のスマート農業実証プロジェクトでは、 技術区分 1)ごとに、スマート農業を農業経営に導入した場合の収入、経費、労働時間等を整理した経営データを収集している。農研機構はこれらの経営データを整理し、稲作部門を中心にスマート農業の効果を示す 経営指標 2)として WAGRI(農業データ連携基盤) 3)に蓄積してきた。
この度、農研機構はこれらの経営指標を活用し、スマート農業を導入しようとする農業者が、その導入効果や機械の購入等に関わる費用等を試算できるアプリ「農業経営計画策定支援システム」を開発した。スマート農業の導入効果は経営条件、地域条件によって異なるため、費用対効果が十分発揮できず過剰投資となる場合があるが、このアプリを活用することで、そのようなリスクを回避することが出来る。
農研機構では、本アプリの社会実装に向けてこのアプリを試行し、使い勝手や適用可能性、経営改善に向けた経営改善シナリオの策定等を検証して頂ける生産者と支援機関の担当者からなるグループを公募する。公募については、農研機構のホームページにおいて令和5年4月下旬に開始する予定。このような試行を通してアプリの改良を進め、今後、一般の方への公開を図っていく計画だ。
<関連情報>
予算 : スマート農業産地形成実証(令和3年度補正)
お問い合わせ先など研究推進責任者:農研機構本部 農業経営戦略部長 宮武恭一
研究担当者 : 農研機構本部 農業経営戦略部 営農支援ユニット長 松本浩一
<詳細情報>
開発の社会的背景
高齢化と労働力の減少が急速に進む中で、ロボット、AI、IoTなどの先端技術を活用したスマート農業に大きな期待がかかっている。しかし、スマート農業の導入には多くの経費を必要とする場合がある。一方、導入効果は経営条件や地域条件により異なることから、導入効果が十分発揮されなかったり、過剰投資になったりするリスクが生じており、こうしたことがスマート農業の導入を躊躇させる要因となっていた。
<研究の経緯>
農研機構は、スマート農業の導入効果の明確化を目的に、農林水産省のスマート農業実証プロジェクトにおいて、作物の収量、販売単価、作業別作業時間、費目別経費などのデータを収集してきた。そして、これらの経営データを整理し、標準的な経営指標としてWAGRI(農業データ連携基盤)に蓄積し、それらのデータをWAGRIから取り出すアプリを作成した。また、それと並行してスマート農業を導入しようとする農業者や支援機関が、計画手法についての専門的な知識なしに経営指標を用いた経営試算が行える「農業経営計画策定支援システム」の開発を進めてきた。
<研究の内容•意義>
「農業経営計画策定支援システム」は、スマート農業技術を導入した経営計画の策定を支援することを目的としたアプリケーションだ( 図1)。本アプリの利用方法は、まず経営モデルとして、気候条件(温暖地など)、地域類型(平地•中山間地)、経営規模(30haなど)、ほ場条件(大区画など)を選択する。さらに農地条件(小作料など)、労働条件(常時従事者や雇用者の人数、労働日数、労賃単価など)、固定資本条件(既存の農業機械の台数•型式など)を設定する。
最後に作物(主食用米•飼料用米など)、収量性、栽培法(移植•湛水直播など)、導入するスマート技術などの組み合わせを選択し、WAGRIに登録された経営指標を読み込んで、経営試算を行う。試算結果は自動的に算出され、旬別労働時間がグラフ表示される。利用者は、経営規模や導入技術を変えて経営試算を繰り返すことで、経営の改善目標に沿った最適なスマート農業の導入シナリオを選択することができる。これにより実際に投資を行う前にその効果や経費が確認でき、過剰投資になったりするリスクを避けることが可能となる。
<今後の予定•期待>
現在、稲作を中心に経営指標を整備してきているが、それらが営農現場の実態に十分適合するかはさらに検証が必要だ。また「農業経営計画策定支援システム」についても、利用方法や使い勝手について改善を進めていく必要がある。
そのため、農研機構では経営指標と「農業経営計画策定支援システム」の試行を希望される方を公募し、このアプリおよびアプリが用いる経営指標データを用いた試行を通してアプリの改良を進め、今後、一般の方への公開を図っていくことを計画している。
【公募予定内容】
件数:10組
公募対象:稲作部門を中心とする生産者と支援機関の担当者からなるグループ
公募時期: 令和5年4月に農研機構のホームページ(https://fmrp.rad.naro.go.jp/)で知らせる
応募条件:「農業経営計画策定支援システム」を試行し、その有効性や改善点を報告頂くことを条件とする。また、経営データとの整合性を確認するため、応募される生産者の経営情報を提供頂く場合がある。具体的な内容、様式は4月の公募の際にお知らせする。
試行内容:応募される方に対しては、農研機構の担当者より、データの活用方法、アプリの使い方、経営改善シナリオの策定等に関して、逐次、情報提供、支援を行う。また、今回の公募により得られた知見は、当該アプリの改良に反映する。
その他:本アプリはWeb上で稼働する。そのためユーザー登録を行い、IDをお知らせしてアプリを利用して頂く。経営指標はWAGRIに蓄積されているが、今回の応募に当たってWAGRIの会員になって頂く必要はない。
<用語の解説>
技術区分
スマート農業実証プロジェクトでは、作物•品種•作型•栽培方法・導入技術などの組み合わせ(例えば、「水稲•コシヒカリ•移植栽培•スマート技術」など)を総称して「技術区分」とし、それぞれごとに経営データを収集している。
経営指標
地域条件(温暖地など)、経営規模(30haなど)、圃場条件を基礎に、10a当たりの収量、販売単価、費目別経費、作業別労働時間などのデータを経営指標と呼んでいる。
WAGRI(農業データ連携基盤)
農業の担い手が、データを使って生産性の向上や、経営の改善に挑戦できる環境をつくるために作成された仕組みであり、データの連携や提供機能を持つ。
発表論文
松本浩一(2019)スマート農業技術の経営的評価手法の評価と展望―水田作経営を中心に― 、農研機構研究報告(1)33-37
<参考図>
図1 「農業経営計画策定支援システム」の利用イメージ