2022.05.13(金) |
ヤマトイモ収穫作業機械化体系の開発・両正条田植機の開発
現場改善による農作業安全の実証研究を開始、農業機械技術
クラスター事業に3課題を追加(農研機構)
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農研機構では生産現場等からの要請対応やスマート農業の推進のため、農業機械技術クラスター事業の令和4年度の実施課題として、
ヤマトイモ
1)収穫作業機械化体系の開発、両正条田植機の開発、及び現場改善による農作業安全の実証研究を新たに開始する。引き続き地域農業の機械化ニーズへの対応やスマート農業の充実に向けて取り組んでいく。
農研機構(本部:茨城県つくば市)では、生産現場の要望の実現を図るため、多様なメンバーで構成する「農業機械技術クラスター事業」(技術クラスター、 https://www.naro.affrc.go.jp/org/brain/iam/cluster/index.html)を2018年4月から立ち上げ、多様な現場ニーズに即応し、かつ異分野の知見を取り入れながら、農業機械の研究開発を行っている。スマート農業等の先端技術研究及び農業機械の安全性検査の実施とともに、関係機関との連携を従前以上に密にして業務を遂行する体制としている。
技術クラスターで扱うプロジェクトは、①地域農業機械化支援タイプ、②革新コア技術実用化タイプ、③次世代革新基盤技術タイプの他に、今年度から新たに④新技術導入効果実証タイプを加え、4つのカテゴリーに分類している。今回、新たに開始する研究課題は以下の3件で①、③及び④のタイプに該当する。
(1) ヤマトイモ収穫作業機械化体系の開発(研究期間:2022~2024年度、①地域農業機械化支援タイプ(園芸))
[目的] ヤマトイモは主に関東地方で栽培されており、千葉県が497ha、群馬県が484haと多く、これらの2県が主力産地となっている。ヤマトイモ栽培における収穫作業時間は総作業時間の約2割を占めている。収穫作業はトラクタ直装式のプラウ(土壌を耕起するための農機具:犂)でヤマトイモを掘り起こしているが、掘り起こし後にほとんどのヤマトイモがプラウの切った溝に沈み込んでしまうため、拾い上げ•コンテナ収容作業の前に人手で土中からヤマトイモを掘り出す作業が必要不可欠であり、作付面積拡大の妨げとなっている。このためヤマトイモ掘取機を開発するとともに、開発機に適した栽植様式を確立することで、収穫作業を省力的に行える機械化体系を開発する。
(2) 両正条田植機の開発(研究期間:2022~2024年度、③次世代革新基盤技術タイプ(水稲))
[目的] 農林水産省では2020年に策定した「みどりの食料システム戦略」において、有機農業の取組面積の目標を2030年に6.3万ha、2050 年に100万haとし、その普及拡大を進めている。農研機構ではこの政策目標の達成に向け、栽培面積が大きい水稲を対象作目として取り組むこととした。
水稲の有機栽培では雑草防除対策が最重要課題とされ、技術開発の要望でも4割以上を占めている。化学農薬を使用しない除草方法として機械除草が有効だが、市販の水田除草機は条間(縦方向)の除草が主であり、株間(横方向)除草は簡易な機構(根張りが弱い雑草を針金で引っ掛ける)であるため取りこぼしが多く、また、稲株まで引き抜かないよう作業速度を遅くしなくてはならないといった課題がある。このため株間の除草効果を改善し、作業の高速化を図る方法として、水田除草機による縦横2方向の機械除草体系を確立することを目指し、本課題において株間と条間の距離を同じに保つ 両正条植え 2)を可能とする田植機を開発する。
(3) 現場改善による農作業安全の実証研究(研究期間:2022~2024年度、④新技術導入効果実証タイプ(安全))
[目的] 農業生産法人では雇用する従業員の労働安全を確保するため、過去の事故情報等に基づき作業手順書等を作成し、その遵守を従業員に求めるなどの取組を行っている例がある。しかしながら、こうした取組を行っている現場においても、軽度の負傷事故やヒヤリハットの発生が後を絶たず、重大事故の発生が懸念される状況となっている。これは農作業の効率を低下させないよう作業手順書が現場で遵守されていないことや作業手順書の内容が不十分であることが要因と考えられる。
問い合わせ先
研究推進責任:農研機構農業機械研究部門所長 天羽弘一
研究担当者 : 同機械化連携推進部 機械化連携推進室室長 大森弘美
広報担当者 : 同研究推進部 研究推進室 広報チームチーム長 藤井桃子
<詳細情報>
用語の解説
ヤマトイモ
ヤマノイモ科ヤマノイモ属ナガイモ種に分類される植物。さらにナガイモ種は、いもの形から長形種のナガイモ群、扁形種のイチョウイモ群、塊形種のツクネイモ(ヤマトイモ)群に大別できるが、関東地方ではイチョウイモ群がヤマトイモ(大和芋)と呼ばれており、本研究課題ではこれを対象作物としている。
両正条植え
ほ場一筆において、植え付けした苗の条間と株間を同じ距離に保ち、植付条と直交する方向にも苗を揃えて植えること。植え付けた苗が碁盤の目のように揃っているのが特長だ。
<参考図>
技術クラスターで実施中の研究課題は下表のとおり。
農研機構(本部:茨城県つくば市)では、生産現場の要望の実現を図るため、多様なメンバーで構成する「農業機械技術クラスター事業」(技術クラスター、 https://www.naro.affrc.go.jp/org/brain/iam/cluster/index.html)を2018年4月から立ち上げ、多様な現場ニーズに即応し、かつ異分野の知見を取り入れながら、農業機械の研究開発を行っている。スマート農業等の先端技術研究及び農業機械の安全性検査の実施とともに、関係機関との連携を従前以上に密にして業務を遂行する体制としている。
技術クラスターで扱うプロジェクトは、①地域農業機械化支援タイプ、②革新コア技術実用化タイプ、③次世代革新基盤技術タイプの他に、今年度から新たに④新技術導入効果実証タイプを加え、4つのカテゴリーに分類している。今回、新たに開始する研究課題は以下の3件で①、③及び④のタイプに該当する。
(1) ヤマトイモ収穫作業機械化体系の開発(研究期間:2022~2024年度、①地域農業機械化支援タイプ(園芸))
[目的] ヤマトイモは主に関東地方で栽培されており、千葉県が497ha、群馬県が484haと多く、これらの2県が主力産地となっている。ヤマトイモ栽培における収穫作業時間は総作業時間の約2割を占めている。収穫作業はトラクタ直装式のプラウ(土壌を耕起するための農機具:犂)でヤマトイモを掘り起こしているが、掘り起こし後にほとんどのヤマトイモがプラウの切った溝に沈み込んでしまうため、拾い上げ•コンテナ収容作業の前に人手で土中からヤマトイモを掘り出す作業が必要不可欠であり、作付面積拡大の妨げとなっている。このためヤマトイモ掘取機を開発するとともに、開発機に適した栽植様式を確立することで、収穫作業を省力的に行える機械化体系を開発する。
(2) 両正条田植機の開発(研究期間:2022~2024年度、③次世代革新基盤技術タイプ(水稲))
[目的] 農林水産省では2020年に策定した「みどりの食料システム戦略」において、有機農業の取組面積の目標を2030年に6.3万ha、2050 年に100万haとし、その普及拡大を進めている。農研機構ではこの政策目標の達成に向け、栽培面積が大きい水稲を対象作目として取り組むこととした。
水稲の有機栽培では雑草防除対策が最重要課題とされ、技術開発の要望でも4割以上を占めている。化学農薬を使用しない除草方法として機械除草が有効だが、市販の水田除草機は条間(縦方向)の除草が主であり、株間(横方向)除草は簡易な機構(根張りが弱い雑草を針金で引っ掛ける)であるため取りこぼしが多く、また、稲株まで引き抜かないよう作業速度を遅くしなくてはならないといった課題がある。このため株間の除草効果を改善し、作業の高速化を図る方法として、水田除草機による縦横2方向の機械除草体系を確立することを目指し、本課題において株間と条間の距離を同じに保つ 両正条植え 2)を可能とする田植機を開発する。
(3) 現場改善による農作業安全の実証研究(研究期間:2022~2024年度、④新技術導入効果実証タイプ(安全))
[目的] 農業生産法人では雇用する従業員の労働安全を確保するため、過去の事故情報等に基づき作業手順書等を作成し、その遵守を従業員に求めるなどの取組を行っている例がある。しかしながら、こうした取組を行っている現場においても、軽度の負傷事故やヒヤリハットの発生が後を絶たず、重大事故の発生が懸念される状況となっている。これは農作業の効率を低下させないよう作業手順書が現場で遵守されていないことや作業手順書の内容が不十分であることが要因と考えられる。
問い合わせ先
研究推進責任:農研機構農業機械研究部門所長 天羽弘一
研究担当者 : 同機械化連携推進部 機械化連携推進室室長 大森弘美
広報担当者 : 同研究推進部 研究推進室 広報チームチーム長 藤井桃子
<詳細情報>
用語の解説
ヤマトイモ
ヤマノイモ科ヤマノイモ属ナガイモ種に分類される植物。さらにナガイモ種は、いもの形から長形種のナガイモ群、扁形種のイチョウイモ群、塊形種のツクネイモ(ヤマトイモ)群に大別できるが、関東地方ではイチョウイモ群がヤマトイモ(大和芋)と呼ばれており、本研究課題ではこれを対象作物としている。
両正条植え
ほ場一筆において、植え付けした苗の条間と株間を同じ距離に保ち、植付条と直交する方向にも苗を揃えて植えること。植え付けた苗が碁盤の目のように揃っているのが特長だ。
<参考図>
技術クラスターで実施中の研究課題は下表のとおり。