2022.03.14(月)

小型果実の種子食用ペポカボチャ新品種
「ゴールデンライト」収量は、既存品種と
変わらずに収穫作業を軽労化(農研機構)

   農研機構は、 種子食用ペポカボチャ 1)品種「ゴールデンライト」を育成した。果実重量が既存の種子食用ペポカボチャ品種の約60%と小型で軽いのが特長だ。また 短節間性 2)および 株元着果性 3)に優れており、整枝作業をせず、かつ果実が見つけやすいことから生産者の果実収穫作業の軽労化につながる。「ゴールデンライト」は、1粒当たりの種子重量は軽いが、種子収量は既存品種と同等になる。
   菓子のトッピングなどに使われるカボチャ種子はほとんどが輸入品のため、菓子業界から国産種子の供給が求められている。現在わが国で栽培されている種子食用ペポカボチャ品種は大型果実のため果実の運搬が困難になる場合が多く、収穫作業の重労働が問題となっており、生産者からは小型で持ちやすい果実の品種を求められてきた。そこで今回、果実が軽く持ちやすい品種の開発を行った。
   農研機構北海道農業研究センターが育成した「ゴールデンライト」は、種子食用に特化したペポカボチャF 1品種。主力の種子食用ペポカボチャ品種「ストライプペポ」は、果実重量が5kg程度であるのに対し、「ゴールデンライト」の果実重量はその約60%の3kg程度と、果実が小型で軽いのが特長だ。
   また短節間性および株元着果性に優れており、本品種の利用により生産者の果実収穫作業の軽労化につながると期待される。「ゴールデンライト」の種子は殻がなく、剥かずにそのまま食べられる。種子重量は「ストライプペポ」より小さいが、収穫果数が多いため面積当たりの種子収量は同等になる。「ゴールデンライト」の開花期は「ストライプペポ」とほぼ同じで、慣行のセイヨウカボチャ産地で栽培可能だ。2023年度以降、民間の種苗会社から「ゴールデンライト」の栽培用種子が販売される予定だ。
<関連情報>
予算 : 運営費交付金
品種登録出願番号 : 第35441号(令和3年5月19日出願、令和3年11月24日出願公表)
<お問い合わせ先など>
研究推進責任者 : 農研機構北海道農業研究センター所長 安東郁男
研究担当者 : 同寒地野菜水田作研究領域 主任研究員 嘉見(かみ)大助
広報担当者 : 同広報チーム長 佐藤豪
<詳細情報>
開発の社会的背景
   菓子用のカボチャ種子はほとんどが輸入品のため、菓子業界から国産種子の供給が求められている。ですが現在わが国で栽培されている種子食用ペポカボチャ品種は大型果実のため、収穫作業は重労働になっている。収穫作業の軽労化のための方策の一つとして、果実が軽く持ちやすい品種の育成が必要となっていた。
<研究の経緯>
   カボチャの主要産地である北海道では、種子食用ペポカボチャ品種として「ストライプペポ」が主に作付けされている。しかし「ストライプペポ」は果実重量が5kg程度となり、それによる収穫作業の重労働が問題となっている。この状況を踏まえ、農研機構北海道農業研究センターでは種子収量が「ストライプペポ」と同等で、小型果実と短節間性•株元着果性の特徴を備えた品種の育成を目指し、選抜と交配を行なって「ゴールデンライト」を育成した。
<新品種「ゴールデンライト」の特徴>
来歴
   「ゴールデンライト」は、農研機構北海道農業研究センターで開発した「豊平2号」(種子親)と「豊平3号」(花粉親)とのペポカボチャF 1品種だ。
<主な特徴>
①雌花および雄花の開花時期は既存種子食用ペポカボチャ品種の「福種」より早く、「ストライプペポ」とほぼ同等( 表1) 。
②「ゴールデンライト」の主枝の伸長は生育初期から中期にかけて短節間性の草姿を示す。その特性は「ストライプペポ」と類似しているが、主枝の節間長は「ゴールデンライト」の方が短い。株元着果率は「福種」及び「ストライプペポ」よりも高い( 表1)。
③株当たりの果実数は「福種」や「ストライプペポ」に比較して多く、平均果重は軽い。また果実が円筒形で運びやすいことから、収穫時の作業性は「福種」や「ストライプペポ」と比べて高くなる( 表1および 写真1)。
④「ゴールデンライト」の種子色は、セイヨウカボチャの殻を剥いだ種子よりも濃い緑色だ。種子100粒重は「福種」や「ストライプペポ」に比べて軽いが、収穫果数が多いことから、単位面積当たりの種子数ならびに種子収量は「ストライプペポ」と比べて同等以上で、「福種」の2倍以上になる( 表1及び写真2)。
<栽培上の留意点>
1「ゴールデンライト」は慣行のセイヨウカボチャ産地で栽培可能だが、特に病害虫の発生が少ない寒地・寒冷地の栽培に向いている。
2「ゴールデンライト」は蔓および葉に硬い毛があることから、栽培管理においては厚手の手袋や作業服の着用が望ましい。
3 栽培方法は慣行のセイヨウカボチャに準じる。種子食用ペポカボチャに登録されている農薬はアグロスリン乳剤、イオウフロアブル、イデクリーン水和剤およびサンケイ園芸ボルドーに制限されている(2021年12月時点)。
4 既存のセイヨウカボチャ品種に比べて貯蔵性が低く、長期間貯蔵した場合は腐敗果の増加や種子の果実内発芽が確認されることがある。
<品種の名前の由来>
果実に縞のない黄金色がかった果皮色で、果実の軽いペポカボチャの意味だ。
<今後の予定•期待>
   カボチャの食用種子生産を行いたいが、収穫の重労働の観点から栽培を断念していた生産者や産地において普及を展開していきたいと考えている。なお、栽培用種子の販売は2023年度以降の予定だが、それまでの間、試験研究用試料として限定量の栽培用種子を有償提供することが可能だ。その手続き等の詳細は下記の原種苗入手先へお問い合わせ下さい。
原種苗入手先に関するお問い合わせ
   農研機構北海道農業研究センター研究推進部 研究推進室知的財産チームまで(電話011-857-9417   FAX011-859-2178)。
利用許諾契約に関するお問い合わせ
 下記のメールフォームでお問い合わせ下さい 【品種についてのお問い合わせ】なお品種の利用については以下もご参照下さい 【品種の利用方法】
 
<用語の解説>
種子食用ペポカボチャ
   ペポカボチャはカボチャ属の一つで、未熟果を食べるズッキーニやハロウィンにおける飾りカボチャなどがその仲間になる。このうち遺伝的に種子に殻がない品種は種子食用の品種としている。種子はそのままの食用、油糧用やトッピング素材に使われる。
短節間性
   カボチャの多くはつる性の植物だが、生育全般または生育の中期まで茎が伸びず、節間が詰まった草姿を示すグループがある。これらを短節間性品種としている。
株元着果性
   カボチャ品種の多くは株元から離れたところで着果をするが、短節間性を有する品種の多くは株元近く(株元から60cm付近まで)に着果する。
 
<参考図>
表1 「ゴールデンライト」の草姿および果実特性 Z

   Z数値は札幌市における2カ年(2019年~2020年)における平均値。 Y株元から15節までの長さを示す。 X株元から60cm以内に着果している株を株元着果とした。 W5段階評価1(難)‐3(中程度)‐5(易)。 V収穫後、果実ごとに種子を取り出して水洗し、60°Cで7日間乾燥後に重量を測定しまた。

写真1 カボチャ果実の外観(左 : 福種、中央 : ゴールデンライト、右 : ストライプペポ)

写真2 カボチャ種子(A : 無処理のセイヨウカボチャ種子、B : 殻剥きされたセイヨウカボチャ種子、C : ゴールデンライト、D : ストライプペポ、E : 福種)