2021.12.03(金) |
リンゴやブドウの着色を促す「果実発色促進装置」 誕生(東大と山口県産業技術センター、農研機構 果樹茶業研究部門) |
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リンゴやブドウなどでは、糖度が十分に高く味はよくても、果皮に色むらがあり、見た目が悪いと商品価値が低下する。東京大学と山口県産業技術センター、農研機構果樹茶業研究部門は、赤い着色が十分に進まなかったリンゴや赤色系ブドウの果実に青色LED光を照射することで、果皮の着色を促す「果実発色促進装置」を共同で開発した。リンゴやブドウの産地では、地球温暖化による高温で着色が不良になる現象も起きている。こうした着色不良のリンゴやブドウなどの商品価値を高める武器として、同装置の幅広い普及が期待されている。
5日間の照射でリンゴの着色向上
今回開発された「果実発色促進装置」はシンプルな箱型(幅50cm、奥行き40cm、高さ15cm)で、青い光を放つチップLEDを多数配置した基板が装着された仕切り板で3つの部屋に分けられている(写真1)。この仕切り板は中に置く果実の形や大きさに応じて左右に可動できるようになっている。
低温の冷蔵貯蔵庫内にこの装置を置き、青色LEDを点灯させると、その熱と装置の吸排気口の調節によって、装置内の温度がそれぞれの果実の着色促進に適した温度に保てる仕組みになっている。直径12cmまでのリンゴなら一回に最大12個を処理できる。
東京大学の試験により、貯蔵庫の中に同装置を置き、装置内の温度を15℃に保ったまま、リンゴ品種「ふじ」に青色LED光を5日間照射したところ、赤みが少なかった果皮の色が赤色になり、色むらが改善されることが確認された(写真2)。照射することで果皮に含まれる色素のアントシアニンがより多く蓄積されて、着色が進む仕組みだ。
リンゴの着色不良は生産者にとって悩みのひとつだ。着色不良は果実が葉や枝の影になって光が十分当たらないことのほか、肥料のやりすぎや高温などが原因で発生する。生産者は果実に太陽の光がまんべんなく当たるように葉を摘んだり、果実の向きを変えたり、地面に反射シートを敷いたりといった工夫をこらしているが、こうした作業は重労働のうえ、必ず効果が現れるとは限らない。最近は温暖化による高温で着色が進みにくいという問題も発生している。
「果実発色促進装置」はこうした生産者の悩みを解消する簡便な手法として役に立つ。この装置を操作するために高度な技術習得は必要ない。糖度が13度以上ある果実で、着色促進効果が認められている。
写真1 青白い光を放つ「果実発色促進装置」
(山口県産業技術センター提供)
写真2 青色LED光の照射で、色むらのあるリンゴ
(上段)の果皮は赤色(下段)に改善(東京大学提供)
赤色系ブドウでも着色促進効果
青色LEDによる着色促進効果は、農研機構果樹茶業研究部門などの試験により、赤色系ブドウでも実証されている。リンゴと同様に「果実発色促進装置」に赤色系ブドウ品種「クイーンニーナ」を入れて、装置内の温度を15℃ ~20℃ に保ったまま、7日間青色LED光を照射したところ着色不良で一部が緑色だったブドウの果皮が赤色に改善された(写真3)。同様の着色促進効果は、「甲斐路」や「赤嶺」など多くの赤色系ブドウ品種でも確かめられた。但し糖度が低い場合は効果が得られませんでした。 こうした着色促進効果はリンゴとブドウで実証された。
写真3 青色LED光の照射で着色が改善されたブドウ品種
「クイーンニーナ」(農研機構果樹茶業研究部門提供)
装置が幅広く普及することを期待
これらの研究成果は2021年11月に東京ビッグサイトで開催された「アグリビジネス創出フェア2021」で発表された。「果実発色促進装置」の販売は少し先になる予定だが、装置の研究開発に携わった山口県産業技術センターの吉村和正専門研究員は、コストダウンが見込める台数で量産した場合、販売価格は1台当たり26,000円程度になると試算している。
最近は、スーパーやコンビニエンスストアで粒売りのブドウが販売されている。透明な袋に詰めた着色不良のブドウに小売り店で青色LED光を照射して着色促進すれば、価格を上げて販売できる可能性もある。吉村専門研究員は「将来的には、海外へ輸出される果実を運搬中や貯蔵中に着色促進して商品価値を高める手段にも応用できる。流通事業者だけでなく、生産者が活用すれば農業所得の向上も見込めます」と装置の幅広い普及を期待している。
詳しい内容は以下のURL又は 別紙をご覧下さい。
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/contents/fukyu/episode/episode_list/144579.html
これまでに紹介した研究成果は以下のURLをご覧下さい(全30話掲載)。
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/contents/fukyu/episode/index.html
この件のお問い合わせは広報担当者 生研支援センター 企画情報部 企画課(田部、家泉)まで。
5日間の照射でリンゴの着色向上
今回開発された「果実発色促進装置」はシンプルな箱型(幅50cm、奥行き40cm、高さ15cm)で、青い光を放つチップLEDを多数配置した基板が装着された仕切り板で3つの部屋に分けられている(写真1)。この仕切り板は中に置く果実の形や大きさに応じて左右に可動できるようになっている。
低温の冷蔵貯蔵庫内にこの装置を置き、青色LEDを点灯させると、その熱と装置の吸排気口の調節によって、装置内の温度がそれぞれの果実の着色促進に適した温度に保てる仕組みになっている。直径12cmまでのリンゴなら一回に最大12個を処理できる。
東京大学の試験により、貯蔵庫の中に同装置を置き、装置内の温度を15℃に保ったまま、リンゴ品種「ふじ」に青色LED光を5日間照射したところ、赤みが少なかった果皮の色が赤色になり、色むらが改善されることが確認された(写真2)。照射することで果皮に含まれる色素のアントシアニンがより多く蓄積されて、着色が進む仕組みだ。
リンゴの着色不良は生産者にとって悩みのひとつだ。着色不良は果実が葉や枝の影になって光が十分当たらないことのほか、肥料のやりすぎや高温などが原因で発生する。生産者は果実に太陽の光がまんべんなく当たるように葉を摘んだり、果実の向きを変えたり、地面に反射シートを敷いたりといった工夫をこらしているが、こうした作業は重労働のうえ、必ず効果が現れるとは限らない。最近は温暖化による高温で着色が進みにくいという問題も発生している。
「果実発色促進装置」はこうした生産者の悩みを解消する簡便な手法として役に立つ。この装置を操作するために高度な技術習得は必要ない。糖度が13度以上ある果実で、着色促進効果が認められている。
写真1 青白い光を放つ「果実発色促進装置」
(山口県産業技術センター提供)
写真2 青色LED光の照射で、色むらのあるリンゴ
(上段)の果皮は赤色(下段)に改善(東京大学提供)
赤色系ブドウでも着色促進効果
青色LEDによる着色促進効果は、農研機構果樹茶業研究部門などの試験により、赤色系ブドウでも実証されている。リンゴと同様に「果実発色促進装置」に赤色系ブドウ品種「クイーンニーナ」を入れて、装置内の温度を15℃ ~20℃ に保ったまま、7日間青色LED光を照射したところ着色不良で一部が緑色だったブドウの果皮が赤色に改善された(写真3)。同様の着色促進効果は、「甲斐路」や「赤嶺」など多くの赤色系ブドウ品種でも確かめられた。但し糖度が低い場合は効果が得られませんでした。 こうした着色促進効果はリンゴとブドウで実証された。
写真3 青色LED光の照射で着色が改善されたブドウ品種
「クイーンニーナ」(農研機構果樹茶業研究部門提供)
装置が幅広く普及することを期待
これらの研究成果は2021年11月に東京ビッグサイトで開催された「アグリビジネス創出フェア2021」で発表された。「果実発色促進装置」の販売は少し先になる予定だが、装置の研究開発に携わった山口県産業技術センターの吉村和正専門研究員は、コストダウンが見込める台数で量産した場合、販売価格は1台当たり26,000円程度になると試算している。
最近は、スーパーやコンビニエンスストアで粒売りのブドウが販売されている。透明な袋に詰めた着色不良のブドウに小売り店で青色LED光を照射して着色促進すれば、価格を上げて販売できる可能性もある。吉村専門研究員は「将来的には、海外へ輸出される果実を運搬中や貯蔵中に着色促進して商品価値を高める手段にも応用できる。流通事業者だけでなく、生産者が活用すれば農業所得の向上も見込めます」と装置の幅広い普及を期待している。
詳しい内容は以下のURL又は 別紙をご覧下さい。
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/contents/fukyu/episode/episode_list/144579.html
これまでに紹介した研究成果は以下のURLをご覧下さい(全30話掲載)。
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/contents/fukyu/episode/index.html
この件のお問い合わせは広報担当者 生研支援センター 企画情報部 企画課(田部、家泉)まで。