2021.08.04(水) |
四季成り性のイチゴ新品種「夏のしずく」 端境期である夏秋期に果実を生産可能に 果実硬度が高くケーキ等の業務需要に適す |
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農研機構は、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県との共同研究により、イチゴ新品種「夏のしずく」を育成した。寒冷地や高冷地における夏秋どり栽培に向く
四季成り性
1)の品種だ。イチゴの端境期に収穫可能で、輸送性や日持ち性に関わる果実硬度が高くケーキ等の業務需要に適している。夏秋期の国内イチゴ生産の振興や輸入品の置換につながることが期待される。
イチゴは生食用やケーキ等の業務用として周年需要があるが、6月から11月にかけての夏秋期は生産量が落ち込み端境期となっている。国内の寒冷地•高冷地では、冷涼な気候を活かして、夏秋期に主に業務用として果実を出荷する夏秋どり栽培が行われ、高単価販売による高収益経営が行われている。
しかし、夏秋どり栽培で用いられている四季成り性品種の改良の歴史は浅く、収量性や日持ち性、輸送性などの改良が求められてきた。 そこで農研機構東北農業研究センターは、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県との共同研究により、6月~11月に収穫できるイチゴ新品種「夏のしずく」を育成した。
「夏のしずく」は四季成り性を有し、寒冷地•高冷地において、既存品種の1.4~2.4倍となる3t/10a以上の収量が見込める。食味は良好で輸送性や日持ち性に関わる果実硬度が高く、ケーキ等の業務需要に適している。東北地方などの寒冷地や高冷地で行われている夏秋どり栽培への普及が期待される。
<関連情報>
予算: 運営費交付金
品種登録出願番号: 「第35039号」(2021年3月4日出願公表)
お問い合わせは研究推進責任者: 農研機構東北農業研究センター所長 羽鹿牧太
研究担当者: 同畑作園芸研究領域上級研究員 本城正憲
広報担当者: 同広報チーム長 櫻玲子
<詳細情報>
新品種育成の背景と経緯
イチゴは生食用やケーキ等の業務用として周年需要があるが、6月から11月にかけての夏秋期は生産量が落ち込み、端境期となっている( 図1)。そのため夏秋期にはアメリカなどから約3000トンが輸入されているが、ケーキ店等の実需者からは新鮮で高品質な国産イチゴが欲しいとの要望がある。
これらの要望に応えるべく東北地方や北海道などの寒冷地•高冷地では、その冷涼な気候を活かして、夏秋期に主に業務用として果実を出荷する夏秋どり栽培が行われ、高単価販売による高収益経営が行われている。
しかし、夏秋どり栽培で用いられている四季成り性品種の改良の歴史は浅く、収量性や日持ち性、輸送性などの改良が求められてきた。そこで農研機構東北農業研究センターは、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県との共同研究により、6月~11月に収穫できる四季成り性のイチゴ新品種「夏のしずく」を育成した。
新品種「夏のしずく」の特徴
①多収性の四季成り性品種「みやざきなつはるか」を種子親とし、果実硬度が高い四季成り性の育成系統06sAB-4e(「なつあかり」×盛岡30号)を花粉親とした交配を2011年に行い、選抜を重ねて「夏のしずく」を育成した。
②寒冷地や高冷地における夏秋どり栽培に適する四季成り性の品種で、端境期である夏秋期に収穫できる。
③葉は大きく立ち上がって大株となる( 表1、 写真1)。ランナーの発生本数は多く増殖は容易だ。④既存の四季成り性品種である「なつあかり」や「サマーベリー」より収量が多く、夏期冷涼な立地ではこれらの品種の1.4~2.4倍となる3t/10a以上の商品果収量が見込める( 表2)。
⑤果実は円錐形で、果皮色は赤、果肉色は淡赤( 写真2、 表3)。輸送性や日持ち性に関わる果実硬度は「なつあかり」や「サマーベリー」より高く、また、糖度、酸度ともに既存品種並みに高く、夏秋期におけるケーキ等の業務需要に適す。
栽培適地および栽培上の留意点
栽培適地は北海道や東北、関東•中部地方などの寒冷地•高冷地。イチゴの主要病害である萎黄病に対しては特に強くはないため、予防的な防除に努めることが重要だ。
品種の名前の由来
夏にとれる、みずみずしいイチゴとのイメージから「夏のしずく」と命名した。
今後の予定•期待
東北地方などの寒冷地や高冷地における夏秋どり栽培での栽培が予定されており、夏秋期の国内イチゴ生産の振興や輸入品の置換につながることが期待される。
種苗の入手について
利用許諾契約を締結した組織が今後種苗生産を行う。種苗の販売は2021年9月以降の予定。
利用許諾契約に関するお問い合わせ
下記のメールフォームでお問い合わせ下さい。
農研機構HP【研究・品種についてのお問い合わせ】なお、品種の利用は以下も参照下さい。
農研機構HP【品種の利用方法についてのお問い合わせ】
<用語の解説>
1) 四季成り性(しきなりせい) イチゴには、一季成り性と四季成り性がある。一季成り性イチゴは、低温、短日条件で花芽を作り、主に冬から春にかけて収穫される。代表的な品種に、「とちおとめ」「福岡S6号(商標名:あまおう)」「恋みのり」などがある。一方、四季成り性イチゴは、夏季の長日条件下でも花芽を作り、夏や秋でも果実を収穫できる。四季成り性イチゴは、主に夏秋期のケーキに利用されている。写真2.「夏のしずく」の果実
<参考図>
図1. 日本の主要都市における月別イチゴ卸売数量と価格(R2農林水産省青果物卸売市場調査より)
「夏のしずく」は、寒冷地•高冷地における夏秋どり栽培において、イチゴの流通量が減る6月から11月にかけて収穫できる。
表1.「夏のしずく」の草姿、草勢、ランナー数
写真1.「夏のしずく」の植物体
「夏のしずく」の草勢は、「なつあかり」や「サマーベリー」より強い。
表2.「夏のしずく」の収量特性
写真2.「夏のしずく」の果
表3.「夏のしずく」の果実特性
イチゴは生食用やケーキ等の業務用として周年需要があるが、6月から11月にかけての夏秋期は生産量が落ち込み端境期となっている。国内の寒冷地•高冷地では、冷涼な気候を活かして、夏秋期に主に業務用として果実を出荷する夏秋どり栽培が行われ、高単価販売による高収益経営が行われている。
しかし、夏秋どり栽培で用いられている四季成り性品種の改良の歴史は浅く、収量性や日持ち性、輸送性などの改良が求められてきた。 そこで農研機構東北農業研究センターは、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県との共同研究により、6月~11月に収穫できるイチゴ新品種「夏のしずく」を育成した。
「夏のしずく」は四季成り性を有し、寒冷地•高冷地において、既存品種の1.4~2.4倍となる3t/10a以上の収量が見込める。食味は良好で輸送性や日持ち性に関わる果実硬度が高く、ケーキ等の業務需要に適している。東北地方などの寒冷地や高冷地で行われている夏秋どり栽培への普及が期待される。
<関連情報>
予算: 運営費交付金
品種登録出願番号: 「第35039号」(2021年3月4日出願公表)
お問い合わせは研究推進責任者: 農研機構東北農業研究センター所長 羽鹿牧太
研究担当者: 同畑作園芸研究領域上級研究員 本城正憲
広報担当者: 同広報チーム長 櫻玲子
<詳細情報>
新品種育成の背景と経緯
イチゴは生食用やケーキ等の業務用として周年需要があるが、6月から11月にかけての夏秋期は生産量が落ち込み、端境期となっている( 図1)。そのため夏秋期にはアメリカなどから約3000トンが輸入されているが、ケーキ店等の実需者からは新鮮で高品質な国産イチゴが欲しいとの要望がある。
これらの要望に応えるべく東北地方や北海道などの寒冷地•高冷地では、その冷涼な気候を活かして、夏秋期に主に業務用として果実を出荷する夏秋どり栽培が行われ、高単価販売による高収益経営が行われている。
しかし、夏秋どり栽培で用いられている四季成り性品種の改良の歴史は浅く、収量性や日持ち性、輸送性などの改良が求められてきた。そこで農研機構東北農業研究センターは、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県との共同研究により、6月~11月に収穫できる四季成り性のイチゴ新品種「夏のしずく」を育成した。
新品種「夏のしずく」の特徴
①多収性の四季成り性品種「みやざきなつはるか」を種子親とし、果実硬度が高い四季成り性の育成系統06sAB-4e(「なつあかり」×盛岡30号)を花粉親とした交配を2011年に行い、選抜を重ねて「夏のしずく」を育成した。
②寒冷地や高冷地における夏秋どり栽培に適する四季成り性の品種で、端境期である夏秋期に収穫できる。
③葉は大きく立ち上がって大株となる( 表1、 写真1)。ランナーの発生本数は多く増殖は容易だ。④既存の四季成り性品種である「なつあかり」や「サマーベリー」より収量が多く、夏期冷涼な立地ではこれらの品種の1.4~2.4倍となる3t/10a以上の商品果収量が見込める( 表2)。
⑤果実は円錐形で、果皮色は赤、果肉色は淡赤( 写真2、 表3)。輸送性や日持ち性に関わる果実硬度は「なつあかり」や「サマーベリー」より高く、また、糖度、酸度ともに既存品種並みに高く、夏秋期におけるケーキ等の業務需要に適す。
栽培適地および栽培上の留意点
栽培適地は北海道や東北、関東•中部地方などの寒冷地•高冷地。イチゴの主要病害である萎黄病に対しては特に強くはないため、予防的な防除に努めることが重要だ。
品種の名前の由来
夏にとれる、みずみずしいイチゴとのイメージから「夏のしずく」と命名した。
今後の予定•期待
東北地方などの寒冷地や高冷地における夏秋どり栽培での栽培が予定されており、夏秋期の国内イチゴ生産の振興や輸入品の置換につながることが期待される。
種苗の入手について
利用許諾契約を締結した組織が今後種苗生産を行う。種苗の販売は2021年9月以降の予定。
利用許諾契約に関するお問い合わせ
下記のメールフォームでお問い合わせ下さい。
農研機構HP【研究・品種についてのお問い合わせ】なお、品種の利用は以下も参照下さい。
農研機構HP【品種の利用方法についてのお問い合わせ】
<用語の解説>
1) 四季成り性(しきなりせい) イチゴには、一季成り性と四季成り性がある。一季成り性イチゴは、低温、短日条件で花芽を作り、主に冬から春にかけて収穫される。代表的な品種に、「とちおとめ」「福岡S6号(商標名:あまおう)」「恋みのり」などがある。一方、四季成り性イチゴは、夏季の長日条件下でも花芽を作り、夏や秋でも果実を収穫できる。四季成り性イチゴは、主に夏秋期のケーキに利用されている。写真2.「夏のしずく」の果実
<参考図>
図1. 日本の主要都市における月別イチゴ卸売数量と価格(R2農林水産省青果物卸売市場調査より)
「夏のしずく」は、寒冷地•高冷地における夏秋どり栽培において、イチゴの流通量が減る6月から11月にかけて収穫できる。
表1.「夏のしずく」の草姿、草勢、ランナー数
写真1.「夏のしずく」の植物体
「夏のしずく」の草勢は、「なつあかり」や「サマーベリー」より強い。
表2.「夏のしずく」の収量特性
写真2.「夏のしずく」の果
表3.「夏のしずく」の果実特性