2021.05.01(土)

「国立公園と国有林」における世界水準を

目指した連携の推進について、国立公園と

国有林の連携に関するプロジェクトチーム

   農林水産省及び環境省では、令和2年10月23日に合意した「コロナ後の経済社会の再設計(Redesign)に向けた「農林水産省×環境省」の連携強化に関する合意」(以下「連携 強化合意」という)において、「国立公園と国有林が重なる地域における優れた自然の保護と利用について、これまでの連携を基礎にして、重点事業や地域を特定し取組を推進する」こととしている。
   日本の国立公園は土地所有に関わらず指定できる制度であり、全国の国立公園の約6割(約130 万ha)が国有林となっていることを踏まえ、国立公園を管理する環境省と国有林を管理する林野庁では、これまで世界自然遺産地域の保護管理をはじめ優れた自然の保護と利用の両立に向けて、巡視、利用者案内、希少種保護やシカ対策等について各地で連携を進めてきた。また、近年では「国立公園満喫プロジェクト」の実施や「日本美しの森お薦め国有林」等の利用施策においても連携した取り組みを推進している。
   こうした中で、連携強化合意の内容を具体化するため、環境省自然環境局及び林野庁国有林野部においてプロジェクトチームを設置して検討を行ってきたところであり、その結果を以下のとおりとりまとめた。
   農林水産省及び環境省では、本とりまとめを踏まえ、これまでの連携を基礎にしつつ、これを超える更なる取り組みを組織的な連携の下に推進し、将来的に世界上位の知名度を有する国立公園に日本の国立公園が含まれるようにするなど国立公園と国有林が重なる地域において、優れた自然の保護と利用の両立を世界水準で目指すこととする。
2.連携事業の進め方
   令和3年度から連携事業として、3に掲げる実施地域において、4に掲げる重点事業を実施する。特に3-1の重点地域においては、重点事業のうち新規性が高いなど世界水準を目指す上でモデルとなる事業を集中的に実施することとする。
   事業の実施区域は、国立公園を基本としつつ、希少種の保護を図る地域や、世界自然遺産地域も含みうるものとする。各地域における事業内容は、自然保護官事務所、森林管理署等の現地機関において、現地実態に即して検討及び実施することを基本とし、現地機関での連携事業を円滑に実施するため、環境省及び林野庁、地方環境事務所及び森林管理局においても情報共有を行うなど連携して対応することとする。また連携事業の実施状況や効果について、本プロジェクトチームにおいてフォローアップを行う。
3.実施地域
①重点地域
   世界自然遺産級の優れた原生自然を有する地域、誘客ポテンシャルの高い地域であり、他地域のモデルとなりうる先駆的な取組を実施可能な地域として、次の地域を重点地域とする。なお、重点地域については、地域の意見など今後検討に応じて変更等もあり得るものとする。
<世界自然遺産級の優れた原生自然を有する地域> 知床、屋久島、西表石垣
<誘客ポテンシャルの高い地域> 日光、中部山岳
 
②個別事業のモデル地域
   重点地域のほか、個別の重点事業のモデルとなり得る地域として、次の地域を個別事業のモデル地域とする。阿寒摩周、支笏洞爺、白神山地、磐梯朝日、上信越高原、妙高戸隠連山、白山、吉野熊野、大山隠岐、足摺宇和海、阿蘇くじゅう
4.重点事業
(1)保全(世界中を惹きつける傑出した大自然を厳格に保護)
     (国立公園内に限定せずに全国的な観点から連携)
①野生鳥獣被害対策、外来種対策、希少種保護増殖対策、景観保全対策
   国立公園と国有林における連携優良事例をとりまとめ、全国に展開する。またシカ等の各種生息•観測情報の現場間での共有や、環境省各種事業と国有林野事業における実施予定の共有•調整により連携の強化を図る。
②希少種の保全
   国内希少野生動植物種の保護増殖事業を共同実施するとともに、生息地等の保護を推進し、必要に応じて生息地等保護区の指定に向けた検討を行う。例えばイヌワシについては、採餌環境の創出と森林管理との調整を行い、繁殖率増加に向けた具体事例を形成する。
③エコロジカルネットワーク
   生物多様性保全に関するポスト2020生物多様性枠組の2030行動ターゲットの達成に向け、保護地域(国立公園、保護林、緑の回廊等)と生物多様性の保全に貢献しているその他の地域等(OECM)との連結性の確保に向けた検討を行う。
(2)利用(国立公園に入ったと実感でき、国有林の大自然が感動を与える体験機会を提供)
①利用者数調整や入域料等の利用者負担
   ガイド付き限定エリアの設定など利用者調整(自然公園法に基づく利用調整地区や必要に応じ国有林の入林管理の仕組みを活用)、入域料等の利用者負担の仕組みについて、その必要性や実現可能性、自然環境への影響等の根拠となる調査を行い、実施に向けた方針を検討する。
②利用ルール•マナーの周知•指導、利用者への情報提供
   自然体験活動促進や適正化のために定めたルール•マナー等の情報を共有するとともに、広報や周知、指導の方法等について検討する。看板•標識については、看板•標識の設置箇所の調整を行うこととし、場所の集約など早期にできる具体事例を形成する。
③利用環境の整備
   地域の協議会等において、現在国会審議中の改正自然公園法案等に基づき自然体験活動促進の方針が策定された場合に、必要な手続きを迅速に実施する。また歩道の笹刈り、展望地における通景伐採等の利用環境整備に関する地域方針の策定やその実施方策について整理する。
④登山道の整備•維持管理
   管理状況•リスク•難易度に応じた登山道の整備•維持管理•活用方策について、民間事業者等による管理、自己責任の範囲、グレーディング等を含め連携して検討する。
⑤利用拠点の再生
   集団施設地区及びその周辺エリアにおける廃屋撤去やリノベーション等の景観上質化、グランピングやトレッキングなど周辺フィールドの整備、維持管理、体験施設や宿泊施設の誘致や指導等について、取組方策を検討する。
⑥自然体験プログラムに関する情報の収集整理•発信
   対象地域•周辺地域における既存のプログラムの情報収集、共有、ウェブ・コンテン ツ集等での発信を検討する。
⑦周遊プログラム策定•広報等の共同プロモーション
   国立公園とレクリエーションの森(美しの森)共通の周遊プログラムの策定や広報など、地域と連携した共同プロモーションについて検討する。
⑧カーボンニュートラル実現に向けた取組
   利用施設等での国産材活用、現地事務所を含む両省の直轄施設でのRE100や再生可能エネルギーの活用等のサステナビリティの実現に向けた取組について検討する。
※上記1345の事業を実施するに当たり必要な場合には土地管理権限の調整を行い、速やかに必要な措置を行うこととする。特に集団施設地区等の利用拠点、利用施設及びその周辺において、事業計画に応じて適当な場合には、所管換を行うことを含めて 検討することとする。
(3)管理(管理者の顔の見える充実した管理の実現)
①巡視情報、取締り•指導情報の共有化
   現地機関間において試行的にメール等で巡視情報を共有するものとする。また、得られた情報をビジターセンター等の施設で集約し、利用者に提供することを検討する。さらに上記の簡易な方法での試行を踏まえ、今後のシステムやデータベースの活用•変更を見据えた連携方法について連携して検討する。
②自然災害や利用者の事故発生時における情報の共有化•対応連携
   現地機関間において災害情報について試行的にメール等で情報を共有する方法や、利用者視点に立った入山情報の管理等について検討する。また、得られた情報をビジターセンター等の施設で集約し、利用者に提供し連携して対応することも検討する。
③共同研修の実施
   両省の研修所や現場の施設等を用いた自然レクリエーション•自然解説や公園管理、森林管理の共同研修の実施可能性について検討する。まずは、今年度に那須平成の森の環境省施設において若手職員を対象とした研修を試行的に実施する。
④人事交流
   両省の施策の相互理解と人的な連携強化のため、現場レベルでの若手職員の人事交流を行う。まずは、今年度に屋久島と釧路(知床を担当)で実施する。
⑤入林•入山する際に必要な手続きの簡素化
   調査研究等に関する申請時における様式の統一化やワンストップサービス等について、各種規定に盛り込むことについて検討する。
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