2014.11.21(金)
建築界のノーベル賞“プリツカー賞”を受賞した
世界的建築家•坂茂さんらが木材を使用した建築の
魅力を語った「木で未来をつくろう2014」20日に

 持続可能な社会作りが世界共通の課題のなか、再生可能な資源である木材を使用した建築の魅力が今、ヨーロッパを中心に見直されている。
 11月20日(木)に優れた木の建築と、その建築物に木を扱う新しさ•利点をひもときながら、鉄やコンクリートにはない温もりのある自然素材としての木の価値や日本の木の利用を見つめ直し、未来につなげるためのトークイベント、並びにパネルディスカッション「木で、未来をつくろう2014」を開催した。また、会場では実際に日本の木の良さを体感できる、全国各地の様々な木製品の展示を行った。
 当日はまず主催者挨拶として、林野庁の今井敏長官はから「日本は国土の3割を占めているのが森林。しかし木材の自給率は低く、ほぼ国外に頼っていたのが実情でした。それが最近は30%台まで回復しつつあります。これからの地方創生に向けて、木材の力を借りて地方を盛り上げていきたいです」と日本の木材利用についての力強い言葉を述べて頂いた。
 そして建築界のノーベル賞“プリツカー賞”を受賞した世界的建築家である坂茂氏が「木材の可能性を考える~被災地支援から美術館まで」をテーマに、トークセッションを行った。

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 坂茂氏は紙を建築の構造として使う取り組みについて、「建築の強度•耐久性は材料のそれと関係がないという信念のもとにやっていました。理論上は分かっていたことを実証した」と語った。また被災地支援については「被災地の建築については、地元に根付いている良い建築家さんが一杯いるから、自分ではなくその人たちがやる方がいいと思っています。復興はなるべく地元の人たちだけで出来るのが一番いいのではないでしょうか」と自らの考えを示した。
 パネルディスカッションでは、more treesの事務局長である水谷伸吉氏をファシリテーターにお迎えし、各パネラーがそれぞれの立場から建築空間デザインプロダクトにおける木材利用について、取り組みを紹介した。

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 まずキーノートスピーチとして林野庁の吉田木材利用課長が、日本の森林の現状と国の取組みについて「林業という経済活動を通じて、自動的に山の中が整理されていくのが望ましいです。育ってきた木をいかに使うかが大事だと考えます」と話した。
建築の視点からは建築家 KUS一級建築士事務所 / NPO法人 team Timberizeの内海彩氏が、建築家として大型木造建築へチャレンジされた実例をもとになぜ建築に木材を使ってきたのか、建築における木材を使う魅力について「木を通して温かみのある光を家に入れました。また、木があることでこの町の景観にぬくもりを感じて欲しいという思いもありました」と語った。
オフィス空間とビジネス、また事業者視点からは(株)イトーキの末宗浩一氏が、針葉樹を独自の技術で加工したオフィス家具の販売など、先進的に実践されているオフィス空間の木質化の取り組みについて「木はヒトの手で育てられる素材です。日本の家具も世界に通用させたいと思っています」と思いを伝えた。
 プロダクトの視点からは、デザイナーの柴田文江氏がデザイナー目線での木材の使い方やその魅力について「最初は使い慣れていない素材なので戸惑いましたが、国産材の現状を知って、デザインの力でなんとかできないかと思いました。既成の概念をデザインで覆したいです」とコメントした。more trees事務局長の水谷伸吉氏は各パネラーの取り組みを踏まえた国産木材利用の魅力と価値特徴について「さまざまな視点から木材利用についての話を聞くことができて、これまで木材を扱ったことがない方も意外とスムーズに使えるのでは、と気づくきっかけになったのではないでしょうか」と称賛の言葉を述べた。
 最後に未来への提言として内海氏「山側から考えて、木がどのくらい建築の方に向かってくれるのかと思っています。それに建築がどう答えられるのかを考えたいです」、末宗氏「林業家から木材を良い値段で買い取り、それを東京オリンピックで使いたい。前の東京オリンピックが50年前だから、ちょうどその頃に切ってまた新たに植えられた木材を使用するということなんです」、吉田課長「日本は資源が少ないと言われるけれど、木はいっぱいあります。国としては木を切ったけど道がなくて運べないなどの状況をなくしていきたい」、柴田氏「まだまだ木を使ってやってみたいことはたくさんあります。また、木が扱いづらい素材だと感じているクリエイターも多いのでそれを変えていきたいです」、水谷氏「ビジネスとして一消費者として、国産材の利用促進を後押ししていきたいと思います」とそれぞれ木材利用についての思いを語った。
 「木で未来をつくろう2014」は11月20日(木)14:00~16:35まで増上寺で行われ、また2014年度木づかい顕彰表彰式は12:30~13:30まで行われた。登壇者は「トークセッション」で坂茂氏(建築家)。シンポジウムは柴田文江氏(デザイナー)、末宗浩一氏((株)イトーキ Econifa開発推進室室長)、内海彩氏(建築家 KUS一級建築士事務所/NPOteamTimberize)、水谷伸吉氏(more trees事務局長)、吉田誠氏(林野庁林政部 木材利用課長)のそれぞれが参加された。