イタリアの街の風景にトラットリア、バールはよく溶け込んでいるが、今年の４月にオープンした「ピッツェリア　カスターニャ」もそんな雰囲気がある。

以前に訪れたイタリアのどこの街にも広場があり、教会があり、その近くにバールやトラットリアが必ずある。朝はカプチーノ、お昼はバニーノや手作りジェラード、色とりどりのドルチェ、食後はエスプレッソを楽しみ、夜はおつまみ料理、ワイン、カクテル、さらにはグラッパやサンブッカで一夜を過ごす光景を思い出させてくれた。

　同店は長野駅前から少し離れているが、久々に見た繁昌店である。入口横には薪が置かれ、３０坪の店内に入るとオープンキチンで大きな薪窯とゆったりした厨房スペースが右側にあり、左側がホールで３３席、個室(１０席)もある。営業時間はランチ午前１１時半～午後２時、ディナーは午後５時～１０時で月曜日が定休日となっている。

同店の特徴はランチを除いて毎日メニューを変えていることである。女性スタッフの大平浩子さんがオーナーシェフの栗原拓実氏(３４)と毎日打ち合わせをして、独特な書体の手書きメニューをつくる。ドリンクの責任者は坂口裕氏。壁に嵌め込みのワインセラーには３０種類のワインが揃えられ、「今日のお料理」に合わせて提供してくれる。１日平均して５～６本のワインが出ており、３０００円～４０００円の価格帯のワインが多く出るという。

　さてある日の前菜、アンティパスト、ピッツア、パスタ、肉料理、デザートを紹介してみよう。まず、前菜とアンティパストでは、北海道厚岸産生ガキとフランス産生ガキ(各４ヶ)のプレート１８００円、淡路産ツバス(鰤の幼魚)と大分産石垣鯛のカルパッチョ１３００円、バーニャカウダ(冬の野菜料理)１１００円、トスカーナ風白レバーのパテと大きなフォカッチャ(生地にオリーブ油を練り込んで焼いたパン)１０００円、魚センマイとちりめんキャベツのトスカーナ風煮込み１０００円、パテを田舎風にしたパテドカンパーニュ９００円、チンタセネーセ（黒豚)のサラミとサラミミラノ、生ハムの盛り合わせ１４００円、たっぷり生ハムサラダ１３００円、桜肉のタルタルパルミジャーノ（パルメザンチーズ）とセルバチコ（葉物野菜)、ビィンコットソース（葡萄で煮詰めた甘いソース）１２００円を揃えていた。

一方、ピッツァはチコソ(豚ばらのコンフィ〈脂肪に漬けたもの〉とモッツァレラのピッツァ)１５００円、フランス産ブラウンマッシュルームと生ハム、ルッコラ(葉野菜ハーブ)のピッツァ１６００円。また、パスタはくるみとクワトロフォルマッジ（4種類のチーズ）１６００円、広島産カキとはまぐりのリングィーネ（ロングパスタ)１３００円、イタリア産フレッシュポルチーニ（茸）とサルシッチャ（ミンチ肉のマリネ)のオレキエッテ（ショートパスタ）１４００円がある。

　肉料理は短角牛ランイチ(ランプ、イチボ等)のロースト１８００円、ブルターニュ産の仔羊背肉のロースト１９００円があり、今日のお薦めは短角牛ランイチという。ジビエ料理も鹿や豬などが入荷すると提供してくれる。
デザートはティラミス５００円、ナッツとはちみつのセミフレッド（生クリームで作るデザート)、ソルベ（氷菓）とジェラードの盛り合わせも５００円となっており、チョイスも完熟パイナップル、キャラメル、ミルクからできる。なお、コーヒー類はエスプレッソ３００円、アメリカーノ３００円、アイスコーヒー３００円、カフェラテ４００円、WESP500円がある。
　ここで遅れてしまったが、一種類のピッツァランチ千円（百円増で四種類のカフェが選べる)、サラダ付きを紹介しよう。ピッツァは、マルゲリータ（トマトソース、モッツァレラ、バジル）、マルゲリータドック（トマトソース、水牛モッツァレラ、バジル)、フンギ（トマトソース、モッツァレラ、キノコ、ハム）、マリナーラ（トマトソース、ニンニク、オレガノ、アンチョビ)、ナポレターナ（トマトソース、モッツァレラ、オリーブ、アンチョビ、ケッパー）の六種類からトッピングできる。また、冬の限定メニューとして「食べるミネストラランチ」９００円がある。もちもちのフォカッチャ（パン)が付いている。

栗原拓実氏は今の心境や状況について話してくれる。「イタリアで学んで来たことや自分のポリシーをどこまでも守って行きたいですね。店舗の初期投資は１０００万円ちょっと。１日平均売上げは１５万円程あり、現在のペースで推移しますと、一年で借入金の返済が終わります」。昼の客単価は一人１２００円、夜は３５００円という。家賃１５万円ということからしてもまずまずの滑り出しのようだ。スタッフは栗原氏の他にワインアドバイザーの坂口氏、ホールサービスは笑顔と気配りが抜群の大平さん、夜は若い男性アルバイトが一人いる。